「過去のマイナス改定で医療機関の倒産や病床の縮小など医療崩壊≠ェ現実化している」として、日本医師会は10月30日、来年度の改定で診療報酬の5.7%の引き上げを求める緊急要望を発表した。日本の医療費について、中長期的には対GDP(国内総生産)総医療費を先進国並みに高める必要性も強調している。
最近の医業経営の実態に関し、日医は、経営の安定性を示す「損益分岐点比率」が民間医療機関で約95%となり、危険水域≠ニ言われる90%台に突入していることに触れ、「国公立病院を含めた場合、病院では100%超と赤字に陥っている」と指摘。収益性についても、病院・診療所の医業収入と経常利益がともに減収減益になっていることを示すなど、医業の厳しい経営状況を挙げている。
加えて、2000年度以降マイナス改定が続いたことから、診療報酬は98年度に比べ、6.5ポイント低下した上、04年度以降は経済の伸びも下回っていることを問題視。「過去の厳しいマイナス改定により、医療機関の倒産や病床の縮小など医療崩壊≠ェ現実化している。地域医療の崩壊を食い止め、フリーアクセスを堅持するためには、(来年度の改定で)診療報酬の5.7%の引き上げを要望する」と主張している。
具体的には、日本の医療機関は全体で「赤字」であり、07年の倒産は9月までで39件に上り、既に過去最高だった06年の30件を上回っていることから、「地域医療を支えるためのコスト」として9,600億円・約3.8%の引き上げを要求。また、国民のニーズが高まっていながら、ほとんど評価されていない「国民の安心を守るためのコスト」という観点から2,200億円・約0.9%アップさせる必要性を指摘している。さらに、日本の医療は医療従事者のボランティア精神≠ナ持ちこたえてきたものの、現場は疲弊し、特定の診療科からの撤退も続出。優秀な人材や良質の医薬品・医療機器等が不可欠として「医療の質を確保するためのコスト」という視点から2,700億円・約1.1%の引き上げを求めている。
このほか、医師不足対策・医師の就労環境改善などに関しては、一般財源による措置の拡充を要請。中長期的には、日本の医療費について対GDP総医療費を先進国並みに高める必要性を示している。
更新:2007/10/31 キャリアブレイン
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