◇柳川まで治療に通う
妻のんち(32)は昨年3月、プチ家出をした。私との大ゲンカが理由だった。長女ひーちゃん(5)、長男ゆー君(3)、次男よっしー(2)とでどこかへ出かけた。
帰ってきたのは午後11時。福岡県柳川市まで行ったという。道に迷った時間を含めて往復9時間。「アホやなあ。船を使えば2時間で着くのに……」
妻が柳川に行ったのはひーちゃんのぜんそくが理由だ。
ひーちゃんが風邪から初入院したのは1歳になる直前。私が出張する直前に入院したこともある。出張を延期し、出張中は実家から母に来てもらった。
妻は必死だった。アレルゲンとなる食材は一切使わず部屋の掃除も欠かさない。それでも、ひーちゃんが夜「こほん」とすると緊張が高まる。冬場は病院に通わない週がないぐらいで、入院の瀬戸際には1日3回通う。夫婦で交代するとはいえヘトヘトだ。
ある時、初入院したときに同室だった男の子と、そのお父さんに会った。聞けば柳川に名医がおり、そこで治療したらぜんそくが出なくなったという。
というわけで家出の2日後、仕事を休んで家族全員で柳川へ行った。雲仙市からフェリーに乗り、さらに陸路1時間余りでM医院に着いた。
治療ははりを親指に刺して免疫力を高めるというもの。先生曰く「5~6回通えば8割の人が良くなる」。妻は3人を連れ弁当も持参し計5回通った。
生活面も見直した。アレルギーには食の欧米化も関係していると考え質素な和食中心の生活に。ひーちゃんのぜんそくは軽度だが、それでもこの数年、毎日ぜんそく薬の吸入と内服が欠かせない。これに並行して漢方薬を飲ませるようにした。新薬は熱やせきが出たという現象には強いが根本的な解決には漢方が良いと考えたのだ。
努力のかいあって? ひーちゃんは昨冬、一度も大崩れしなかった。暖冬だったのも良かった。夫婦で「こんな平穏な冬は初めてー」と喜んだ。さーて今年の冬はどうなるやら。【山崎太郎・34歳】<イラスト・キムラみのる>
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毎日新聞 2007年10月31日