事件・事故・裁判

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録 Yahoo!ブックマークに登録
この記事を印刷
印刷

リタリン:東京・江戸川の精神科院長らが医師法違反で逮捕

 依存性の高い向精神薬「リタリン」の乱用問題に絡み、警視庁生活環境課は31日、東京都江戸川区の精神科「京成江戸川クリニック」院長、小倉暢夫(67)=千葉県市川市=と事務員、生駒祐子(42)=東京都墨田区=の2容疑者を医師法違反(無資格医業)容疑で逮捕した。医師の不在時に医師免許のない職員がリタリンを投薬していたといい、ずさんな医療の実態を重く見て強制捜査に踏み切った。乱用問題は刑事事件に発展した。

 調べによると、2人はクリニックの看護師や他の事務員らと共謀、小倉容疑者が体調を崩して入院していた今年8月21日~9月8日、男性患者(41)ら5人に対し、無資格職員らによる問診や注射、投薬、診断書発行などの医療行為を9回にわたって行った疑い。

 小倉容疑者は調べに対し、大筋で容疑を認めているという。入院中に「いつも通りにお願いします」と指示を出すなど、ずさんな薬の管理が常態化していたとみられ、職員らはリタリンを含む複数の薬剤を患者に投薬していたという。無資格者の医療行為(医業)に対しては3年以下の懲役か100万円以下の罰金が科される。

 小倉容疑者は旧厚生省薬務局課長補佐などを務めた後、97年に京成江戸川クリニックを開業。インターネット上で「リタリンを大量に処方してくれる」などと評判になっていた。

 患者の家族から「リタリンを処方され続け、薬物依存になった」との苦情や相談が寄せられ、9月に東京都と江戸川保健所が医療法違反(不適切な医療の提供)の疑いで立ち入り検査を実施。生活環境課も同日、クリニックなど9カ所を家宅捜索し、処方や診察の実態を詳しく調べている。

 リタリン乱用を巡っては、東京都新宿区の「東京クリニック」でもずさんな診療が行われていたことが判明。症状を十分に聞かないままリタリンを処方したり、患者の求めに応じて宅配便で処方せんを送っていたことが明らかになり、東京都などが立ち入り検査を行っている。【精神医療取材班】

 ◇8月中旬からほぼ休業状態

 京成線の高架に沿った住宅街にある京成江戸川クリニックには午前11時10分ごろ、捜査車両3台が到着し、スーツ姿の捜査員約10人が裏口の鍵を開け家宅捜索に入った。

 窓のカーテンはすべて閉められ、正面玄関のガラス扉には「しばらくの間休診いたします」と手書きの張り紙があった。開業時間の午前10時前後には数人の患者が訪れたが、張り紙を見て帰っていった。近所の女性(70)によると、8月中旬からほぼ休業状態で「20人くらいの患者が外で数時間待っていることもあった」という

 ▽リタリン 塩酸メチルフェニデートの商品名で、依存症や幻覚・妄想などの副作用がある。インターネット上などで大量処方に応じる医療機関の情報がやり取りされたり、若者らの間で売買が行われるなど、乱用が社会問題化していた。リタリンのネット販売が薬事法違反で立件された例もある。厚生労働省は今月26日、適応症からうつ病を削除するとともに、処方できる医師や医療機関を登録制にして流通を制限することを正式決定している。

毎日新聞 2007年10月31日 11時26分 (最終更新時間 10月31日 11時48分)

事件・事故・裁判 アーカイブ一覧

ニュースセレクトトップ

エンターテインメントトップ

ライフスタイルトップ

 


おすすめ情報