依存性の高い向精神薬「リタリン」の乱用問題で、「京成江戸川クリニック」(東京都江戸川区)が、医師免許のない職員らに薬剤の処方せんを出させていたことが分かった。警視庁生活環境課は医師法違反(無資格医業)の疑いで本格捜査に乗り出す方針を固めた。乱用問題が刑事事件に発展する可能性が出てきた。【精神医療取材班】
京成江戸川クリニックは、旧厚生省薬務局課長補佐や公衆衛生局精神衛生監査官などを務めた経験がある院長(67)が開業。関係者によると、クリニックには院長だけしか医師がいないにもかかわらず、院長が今年8月に体調を崩して入院した後の約1カ月間、医師免許を持っていない病院職員らが薬剤の処方せんを出すなどしていたとされる。職員らは院長の指示か了承を得ていた可能性があるという。
東京都などは9月、同クリニックと東京都新宿区の「東京クリニック」に対して、医療法違反(不適切な医療の提供)の疑いで立ち入り検査を行っている。職員らによる薬剤の処方は、医師法に違反する疑いが強いという。
両クリニックは、インターネット上で「患者が要求すればリタリンを大量に出してくれる医療機関」として評判になっており、患者の家族らからは、「リタリンを処方され続け、薬物依存になった」などの相談や苦情が東京都や地元の保健所に多数寄せられていた。
リタリンは塩酸メチルフェニデートの商品名。依存症や幻覚・妄想などの副作用があり、若者らの乱用が社会問題化していた。製造・販売元の「ノバルティスファーマ」(東京都港区)は17日に適応症からうつ病を削除するよう申請、26日に厚生労働省に正式承認された。同省はリタリンを処方できる医師や医療機関を登録制にして流通を制限する方針も決めている。
毎日新聞 2007年10月31日 東京朝刊