「人生には上り坂もあれば、下り坂もある。もう一つは『まさか』という坂だ」。安倍政権の突然の崩壊を受け小泉純一郎元首相は今月初め、こう強調した。
確かに老舗・赤福が製造年月日の偽装で営業禁止処分を受けるなど「よもや」「いくら何でも」が続く。昨日もその小泉官邸直結で政策を遂行してきた防衛省の守屋武昌前事務次官が国会で証人喚問を受け、まさかの坂を転げ落ちた。
ことは猛スピードで進んだ。民主党がインド洋での米補給艦への給油量訂正問題をめぐって前次官の喚問を要求したのは十七日のこと。衆院解散が視野に入る中、どの党もかばわず二十四日には決定。テレビ中継も本人は静止画像を望んだが、かなわなかった。
さて、守屋氏は防衛商社「山田洋行」元専務とのゴルフ問題については妙に冗舌だった。十二年前から始め、回数は二百回を超え、半分は夫人同伴でゴルフ場では偽名を使い、賭けゴルフなどをしたことも認めた。
東京・市谷の防衛省では「わたしたちがイラクなどで汗を流していたとき、次官はグリーンの上で汗を流していたのか」と隊員らがあきれ顔だったという。だが、接待に対する便宜供与は「一切ない」と否定。
海上自衛隊の給油量訂正に絡む隠ぺい問題も「覚えていない」の連発、肝心なことは何一つ分からなかった。これで喚問は終わりなのか。「まさか」。