防衛商社「山田洋行」の元専務との癒着疑惑が持ち上がっている守屋武昌前防衛事務次官に対する証人喚問が、衆院テロ防止特別委員会で行われた。事務次官経験者の国会での証人喚問は一九八八年以来のことで情けない限りだ。
守屋氏と元専務の親密な関係は、ゴルフをはじめ飲食接待など数多く取りざたされてきた。証人喚問では、こうした癒着の実態とともに次期輸送機(CX)エンジン調達などをめぐる便宜供与の有無、さらには海上自衛隊の給油量訂正に絡む隠ぺい問題への関与などが焦点だった。
しかし、追及不足で全容を浮き彫りにするには至らず、期待外れに終わったといわざるを得ない。元専務とのゴルフについて守屋氏は、十年ほど前から始めて二百回を超えることを明らかにした。偽名を使っての夫婦同伴も多かったという。さらに、妻と二人分のゴルフセットを二回受け取っていたことや賭けマージャン、旅行招待なども受けたという。あらためて親密さをうかがわせた。
こうした行為について守屋氏は、利害関係者とのゴルフなどを禁じた自衛隊員倫理規程違反などの認識はあったと述べるとともに、「不適切で痛切に責任を感じる」「国民のみなさんや防衛省の職員に大変申し訳ない」などと謝罪した。
元専務との密接な関係については認めた守屋氏だが、問題が便宜供与などの疑惑に及ぶと全面的に否定した。CXエンジン納入をめぐり、元専務がオーナーとの対立から山田洋行を離れて昨年九月に設立した防衛商社「日本ミライズ」と「随意契約できないのか」と部下に口出ししたとされる件では「そういう発言はしていない」と断言した。
このほか、山田洋行が防衛省からの天下りに積極的とされる点でも「一度も働きかけたことはない」。海自の給油量訂正に絡む隠ぺい問題への関与も打ち消した。
衆参「ねじれ国会」の下での証人喚問は、野党が主導的な役割を果たすことができ、疑惑追及に重い責任を負う。与党もごまかしはきかない。それだけに鋭い切り込みを期待したが、元専務との宴席に防衛庁長官経験者を含む政治家が同席したことを引き出しながら追及の手が止まってしまうなど攻め手を欠いた。国会の力量に失望感を覚える。
事務方トップの不祥事や数々の疑惑を残したままにしてはならない。国会は再喚問や他の証人による喚問など、あらゆる手を尽くして早急に解明を図ることだ。あいまいにするようなことがあっては国会の信頼に傷が付こう。
経済財政諮問会議の論議に地方の声を反映させる「経済財政に関する地方会議」の第一回会合が高松市で開かれた。
諮問会議の地方開催は初めてだ。地域経済活性化への取り組みをアピールし、福田内閣が地方重視にかじを切ったことを印象づける狙いがあったのだろう。
大田弘子経済財政担当相らが四国の経済人らと「四国の経済立て直し」をテーマに意見交換した。地元からは、瀬戸大橋など本四連絡橋の料金問題について「高い通行料金が企業競争力を低下させ、格差を生む元凶の一つになっている」などと、値下げを求める声が相次いだ。大田経財相は会議後の会見で「政府内で議論していくことが必要だ」と述べたが、値下げは当然の要望だ。
このほか、公共事業削減などの構造改革や規制改革の行き過ぎを懸念したり、財源・権限の地方への移譲の必要性などを訴える意見もあった。諮問会議はこうした地方の声を踏まえ、提言へ具体的に反映させてもらいたい。十一月には青森市で二回目の会合が予定されている。
諮問会議が地域経済の立て直しを主要議題の一つにあげたのは、都市と地方の格差拡大などへの不満が、参院選の与党惨敗につながったとの「反省」からだ。地域経済活性化に向け、中小企業の生産性向上、農業・農政改革、公共投資改革、地域力再生機構の創設―の四本柱を掲げる。
十一月には地域活性化策をまとめ、年末の予算編成に反映させたい方針だが、十分な検討ができるのかどうか。ばらまき予算ではない実効策が打ち出せず、単なるパフォーマンスで終わるようなら、再び地方から手痛いしっぺ返しを受けることになろう。
(2007年10月30日掲載)