国土交通省は30日、大手建材メーカー「ニチアス」(東京都港区)が耐火用建材の性能試験を偽り、大臣認定を不正に取得していたと発表した。建築基準法で特に耐火性があると認定する基準の約3分の2の耐火性しかなかった。不正建材は約10万棟に使用されており、住宅メーカーは無償修理を発表するなど対応に追われている。
建築基準法は「隣地との境界線から3メートル以内にある建物の1階部分は延焼の恐れがあり、45分以上の耐火性を確保すること」などと定めている。
同省などによると、ニチアスが大臣認定を不正取得したのは、▽準耐火構造の軒下部18種類▽耐火構造の間仕切り壁2種類--の計20種類。01年2月~05年8月に認定を受けた。不正の手口はいずれも、民間性能評価機関による試験の際、外から見えない内側の材料を水に浸し、燃えにくくしていた。その結果、45分の耐火性が必要な部分で実際には25~30分、1時間の耐火性が必要な部分では、40~45分の耐火性しかなかった。
昨年10月に内部調査で、不正を把握したが、川島吉一社長ら幹部3人の判断で公表しなかった。今月16日に匿名の告発文が届いたため、今月17日に同省に報告した。
川島社長は「00年に大臣認定の基準が厳しくなった。開発の現場にプレッシャーがあった」と釈明。不正発覚後の対応には「隠ぺいと受け取られても仕方がない」と陳謝した。【高橋昌紀】
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ニチアスから建材を納入している「旭化成ホームズ」(東京都新宿区)は、住宅約4万棟を無償改修すると発表した。対象は「ヘーベルハウス」「ヘーベルメゾン」で、関東、東海、中部、西日本の一部に01年7月以降に建設した住宅。内訳は、引き渡し済み3万8077棟と、工事中の2000棟前後。改修費は総額400億円にのぼる可能性があり、費用をニチアスに請求する方針。他の住宅メーカーも対応を検討している。【辻本貴洋】
毎日新聞 2007年10月31日 0時13分 (最終更新時間 10月31日 0時22分)