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A Successful Failure このページをアンテナに追加 RSSフィード

2007-04-21

LM-72007-04-21

[] 変わり果てた彼女の姿を見ても、まだ飲酒運転が出来ますか?

J-CASTによれば、mixiで飲酒運転を告白、非難するコメントに開き直りをした男性が、飲酒運転の事実を職場に通告され解雇されたそうだ。非難メールに基づき関連部署に適切に連絡を行った二丈町、報告に基づき「諭旨解雇」という毅然とした対処を行った福岡広域森林組合は、しっかりと仕事をしているようだ。

軽い気持ちで飲酒運転をする人は、自分の行為がもたらす可能性に対する想像力が絶望的なまでに欠如している。事故を起こした時、その被害者や家族にどのような影響を及ぼすのか、そのことをしっかり考えれば、決して飲酒運転なんか出来ないはずだ。

Jacqui Saburidoの悲劇

上記の有名なサイトは、飲酒運転がもたらす悲劇についてあなたの想像力を補完してくれる助けとなるだろう。RosaliaとAmadeoの一人娘であるJacqui Saburidoは20歳になるまで、ベネズエラのカラカスで育った。彼女は、両親が離婚した後は父親と同居し、父親のエアコン事業を継ぐために工学の勉強をしていた。Jacquiは1999年に英語の勉強をかねてテキサスに旅行に行ったが、そこで悲劇が起こった。上記のサイトに行けば、すぐに異形の人物の姿を映した写真が目につくだろう。それが現在の彼女である。左下には悲劇が起こる前の彼女の写真があり、美人であったことが分かる。残念ながら今は見る影もない。

上記サイトで配布されているJacquiline and Amadeo - CHASING HOPEには、多くの写真とともに事件の概要、その後の経過について記載されている。全世界のドライバーのみならず、飲酒運転を未然に防ぐことができる可能性がある人全員に、目をそらさず一枚一枚の写真を見てもらいたい。たとえ詳細が分からなくても、変わり果てた彼女の姿は、飲酒運転がもたらす悲劇を雄弁に物語る。

1999年9月19日

その日Jacquiはバースディパーティに出席し、彼女と彼女の友人の、Laura Guerrero、Johan Daal、Johanna GilはクラスメートのNatalia Chpytchak Bennettの運転する車に乗って家から帰る途中だった。一方、18歳の高校生Reginald Stepheyは、友人とビールを飲んだ後、車を運転して家に帰る途中だった。オースチンの外れで2台の車は衝突し、LauraとNataliaは即死、JohannaとJohanは軽傷を負い、Jacquiは脚がダッシュボードに挟まって身動きがとれなくなった。

そのとき車に火がついた。救助員が駆けつけた時には車は数フィートの炎に包まれていたが、彼らは一度は消火器で火を消し止めることに成功した。しかし、ダッシュボードに挟まった彼女を助け出すことが出来ないうちに、再び火が付き彼女がおよそ45秒の間火に包まれることとなった。消防車が到着し消火活動がなされ、Jacquiはダッシュボードを切断して救出され、救急病院にヘリで空輸された。

彼女は体の60%以上の部分に酷い火傷を負っていた。大部分は最も酷い火傷であるIII度(deep burn)*1だが、一部はそれを超えるIV度からV度(真っ黒に炭化)の火傷だった。10を超えると重症と判定されるburn index*2は実に60以上。治療に当たった医師は彼女が助かる見込みはないと考えたが、懸命な治療の甲斐もあって彼女は一命を取り留めることが出来た。しかし、彼女はその代償として多くのものを失わなくてはならなかった。彼女の指はすべて切断され、髪、耳、鼻、唇、まぶた、そして視力のほとんどを失った。美人だった彼女の面影は消え、異形の姿になりはてた。彼女は事故以降、視力を取り戻すことに成功した角膜移植を含む50以上の手術を受けているが、事故前の姿に戻る術はない。彼女が自分の身に突然降りかかった理不尽な不幸に嘆き悲しみ、人生に絶望したことは想像に難くない。

事故後

2001年6月、Reginald Stepheyは2回の飲酒運転による危険運転致死傷罪によって有罪判決を受け、7年の懲役刑と$20,000の罰金刑を受けた。上告は棄却され刑が確定している。一方、Jacquiは勇敢にも同様の悲劇を繰り返さないために活動を起こすことを決意した。彼女は、飲酒運転がもたらす悲劇を示すためにメディア上に自分の事故写真を掲載することを許可し、飲酒運転を撲滅するキャンペーンに参加している。彼女がカメラの正面に立ち、自分の事故前の写真と、今の自分の姿を対比させながら、"This is me, after being hit by a drunk driver."と話すCMは衝撃的である。

上記サイトHelpJacquiでは次のような啓蒙資料の配付を行っている。

彼女の姿を目に焼き付けて、自分の行動が他人にこのような筆舌に尽くしがたい不幸をもたらす結果につながることを認識すれば、金輪際飲酒運転なんて怖くて出来ないはずだ。飲酒運転の罰則が厳罰化されたこともあり、飲酒運転を控える人が多くなってきたが、本来厳罰化なんて関係ない。厳罰が怖くて飲酒運転を控えようという人は結局自分のことにしか想像力が働いていない。事故には必ず被害者がおり、場合によっては一生かかっても償いきれないほどの被害を与える可能性があるのだ。もうちょっとだけ想像力を働かせて、潜在的な被害者に思いを馳せてほしい。

交通事故はどれだけ注意してもなくせないかも知れないが、飲酒運転は注意すればなくすことができる。どうか交通事故によって不幸になる人が一人でも減りますように。

*1:真皮全層と皮下組織が障害される大火傷。 水疱形成はなく、黒褐色の乾いた焼痂で覆われる。壊死となるため知覚が消失する。治療方法など詳しくは、皮膚科・膠原病ノート - 火傷,熱傷 burnを参照。

*2:burn index = 0.5×II度熱傷面積% + III度熱傷面積%