14年前の秋、同僚らが「がん告知の扉」という連載に取り組み、一冊の本になった。その中に、がん告知を巡る病院勤務医アンケートの結果が紹介されている。本人に告知すべきとした医師は、治る見込みのある場合で7割、治る見込みのない場合は26%だった。
この6月、がん告知される身になった。告知は当然の事として行われた。お世話になっている「がん診療連携拠点病院」での本人告知割合は100%近いという。
本を読み返し、この14年間に大きく変わったと感じるのはインフォームド・コンセントだ。今は、手術や治療に際し、合併症や副作用のリスクの説明を受け、本人の判断が求められることが一般的だ。当然、告知が前提になる。
14年前の記事に込められた「患者本位の医療」に、現実は近づきつつあるとは思う。ただ、医療過誤訴訟なども想定しているのだろうなと感じられる事細かなリスクの説明を受ける患者本人は、どれだけしっかりと現実を受け止めているのか……。患者を支える態勢については、まだ課題が残されているように思う。【湯谷茂樹】
毎日新聞 2007年10月30日 大阪夕刊