助産所SOS 病院と提携義務化…医者不足で廃業も
10月30日8時0分配信 産経新聞
お産を扱う助産所が存続の危機に陥っている。4月の医療法改正で、助産所には病院との間で緊急時の妊婦搬送の提携をするよう義務づけられたが、産科医不足が原因で、提携病院が見つからないという事態が起こっている。一部の助産所は廃業に追い込まれる可能性も出てきた。専門家からは「国による支援が必要」という声も出ている。
助産所は家庭的な雰囲気の中で、自然分娩(ぶんべん)ができることなどから、根強い利用者が多い。厚生労働省の調べでは、平成17年の助産所での出生数は1万676人。ここ10年ほど安定して、1万1000人前後で推移している。助産所数は全国で推計691という。
そんな中、4月に医療の質の向上を目的とした改正医療法がスタート。助産所のうち、ベッドがある助産所には、緊急時の処置に備えて以前から連携が定められていた「嘱託医」に加え、「小児科や産科を備えた有床の医療機関」との連携確保が義務化された。
しかし、既存の助産所にとって、新たな医療機関との連携体制を構築することが負担となっている。助産師でつくるNPO法人(特定非営利活動法人)「お産サポートJAPAN」のまとめによると、9月時点で、緊急搬送先の連携医療機関が確保できていない助産所は34%に上っている。
連携体制の構築には1年間の猶予期間があるが、それも残り半年を切った。同会は「来年3月までに確保できないと、廃業に追い込まれる恐れがある」と窮状を訴える。
神奈川県内のある助産師は、「病院の側に、文書で緊急搬送先の提携をすることへの警戒感があるようだ」と話す。
慢性的な産科医不足を背景に、各地の中核病院レベルの医療施設でも、新たな負担となりかねない提携に難色を示すといった事情もあるようだ。
日本助産師会は「利用者の安心なお産を目的に法整備がされたが、一方で、お産の選択肢が狭まる可能性が出てきた。行政による病院紹介など助産所への支援策も整えてほしい」と訴える。
お産問題に詳しい聖路加看護大学の堀内成子教授(助産学)は「産科医不足や産科病棟閉鎖の進行などの影響で産科環境が悪化する中、改正法が始まった。タイミングが悪く、助産所の産科施設の確保の困難さに拍車がかかった」と話している。(神庭芳久)
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