伊那市の子育て支援グループ「子どもネットいな」(井口ゆき子代表)は29日、「上伊那の医師不足について、どうなる!これからのお産」をテーマにした講演会を伊那市のいなっせで開いた。伊那中央病院(同市)の小川秋実院長と日本助産師会県支部上伊那地区長の池上道子助産師が講師となり、医師不足や助産師の現状など率直に語った。
小川院長は、昭和伊南総合病院(駒ケ根市)が来年4月から産科を休止するのに対応し、産科医の増員も見込んで中病の施設改修を行う方針を説明した。ただし、産科医増員の見通しは「(信大との)今までの話し合いでは可能性は十分あったが、産科医の減り方が激しく、実現するかどうか何とも言えない」と厳しい見方も示し、施設改修をしても「医師が増えなければ現状以上のことはできない」とも述べた。
池上助産師は「きちんと健康管理すれば、医師がいなくても安全なお産はできる。病院任せにしないで」と「お産の本質」につながる自己管理の大切さを強調。助産所でのお産も「病院で産めないから助産所で−というのでなく、あくまで自分のお産をしたいということで選んでほしい。リスクの高い人は病院を選んで」とアドバイスした。
子育て中の母親ら約60人が来場。「知れば知るほどどうにもならないことだと感じた。自分の体の管理や病院の掛かり方など基本をゆっくり勉強し、中病におんぶに抱っこではいけないと思った」との感想も聞かれた。
来年5月に2人目を出産予定という伊那市出身で埼玉県内に住む女性(30)は「里帰り出産ができないと知ったときにはショックでした。上の子の面倒を見てもらうには実家で産むしかない。お産は病院と思っていたけれど、市内の助産所でと考えています」。
井口代表は「生活の根幹を揺るがす問題。子育て支援以前の問題で、いろんなところで、みんなで考えていく必要がある」と話していた。