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【埼玉】

財政難で市町村に温度差 妊婦健康診査の公費負担拡大

2007年10月30日

 厚生労働省は少子化対策として妊婦健康診査の公費負担拡大を各都道府県に求めているが、実施主体となる県内市町村の足並みが乱れている。同省は今年一月、五回程度の健診無料化を通知したが、一律二回の公費助成をしてきた県内では、ときがわ町が今月から五回に拡大しただけ。多くの市町村は来年度からの拡大を検討しているが、「望ましくても予算がなくては」との声も漏れる。 (萩原誠、井上仁)

 県内では九月まで、どの市町村も妊婦が受けられる無料健診は二回だった。この財源は原則、国の地方交付税で賄われ、不交付団体だけが独自に確保していた。国は本年度予算で少子化対策として地方財政措置を拡充。これを受け厚労省は「市町村で妊婦健診の公費負担を相当回数増やすことができるようになった。妊婦に最低限必要な五回程度の健診公費負担が原則」と通知した。

 ところが、通知時は既に各市町村で本年度予算編成がほぼ終わった時期。「今さら予算を組み替えられない」と、全市町村が本年度当初からの実施を見送った。こうした中、ときがわ町はプラス三回分の予算九十二万四千円を九月補正に盛り込んだ。同町は「既に妊婦から問い合わせがあり歓迎されていると思う」と話す。

 ほかの自治体が五回無料化に踏み切れない理由は、通知の時期だけでなく財源の問題がある。県によると、今年五月の時点で二割程度の市町村が財政上の理由で回数増を検討していなかった。その後、県が必要性を説明し、八月時点でようやくすべての市町村が検討を始めた。

 自治体の反応の鈍さの背景には国との認識の違いがある。国は少子化対策の地方財政措置に健診公費負担の財源を盛り込んだと主張するが、市町村はあくまで少子化対策であって、健診を対象とするかどうかは自治体側の裁量と受け止める。

 さいたま市は来年度から無料健診の回数を増やす方向で検討している。相川宗一市長は「健診せずいきなり病院に来て産むケースが見受けられるが、かなり危険。無料健診増は、安全に出産していただくだけでなく、妊婦がかかりつけ医を持つという効果も期待できる」と話す。同市の場合、二回で約二億円の財源が必要で、何回無料とするかは検討段階という。

 一方、「当面二回のまま」とするのは川口市で、その理由を「拡大が望ましいが、財政的な問題がある」と説明する。同市は不交付団体で財源はすべて市の負担。五回に増やすと一億数千万円が必要といい担当者は「ほかに充実させないといけない制度もある。予算がなくては」と嘆く。

 越谷市や草加市など拡大を検討している自治体も「予算が確実に確保できるか分からない」「近隣自治体と歩調を合わせる必要もある」などと様子見の構えを見せる。ある自治体の担当者は「首長の決断が一番の決め手だ」と話した。

 妊婦健康診査 妊娠中毒症や難産、流産などを予防するために行う健康診断。超音波検査や尿検査、血圧測定などをする。妊娠初期から出産までに14回程度受診することが望ましいとされる。1回の費用は5000−7000円程度。超音波検査などで1万円を超えることもある。

 

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