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2007年10月30日

◎守屋氏証人喚問 信じ難い「便宜なし」の証言

 国防を担う事務方のトップが、この程度の人物だったとは、思ってもいなかった。週末 、納入業者とゴルフざんまいで、二百回以上接待を受けていた。うち半数ほどは妻を同伴し、偽名まで使っていたという。守屋武昌氏は、「便宜を図ったことは一切ない」と証言したが、民間企業が何の見返りも期待せず、接待を続けるとは思えない。「口利き」疑惑は、ますます深まったと言わざるを得ない。

 守屋氏は、四年余という異例の長きにわたって次官を務め、「防衛省のドン」などと呼 ばれた。その「大物次官」が納入業者から受けた接待は、妻と二人分のゴルフセットのプレゼントや一万円でのゴルフプレー、賭けマージャンや酒食のもてなしなどだった。一度に巨額の金が動いたわけではないが、いじましく思えるほど回数が多く、接待攻勢にどっぷりと首まで漬かっていた様子がうかがえる。

 守屋氏を接待した業者は、防衛省から次期輸送機(CX)試作機用エンジンなどを受注 している防衛商社で、〇六年度までの五年間で、同省から約百七十億円もの装備品の注文を受けた実績を持つ。守屋氏を「接待漬け」にしておくメリットは、十分過ぎるほどあっただろう。それだけに、守屋氏への接待がゴルフ程度にとどまっていたとは考えにくい。守屋氏とともに接待を受けたとされる防衛庁長官経験者への聴き取りを含め、さらなる疑惑の解明が必要だ。

 特にCX試作機用エンジンの受注で、便宜を図ったことはないのか、また、海上自衛隊 がインド洋で、米艦艇に補給した給油量の訂正問題に、守屋氏が関与していなかったかどうか、政府・与党は中途半端なところで幕引きせず、国民の疑問にこたえる努力をしてほしい。

 自衛隊員の倫理規程は、納入業者などの利害関係者とのゴルフを禁じている。守屋氏は 証人喚問で、倫理規程違反を承知の上でプレーしていたと語った。悲願の「省」昇格を果たしたとはいえ、トップがこの体たらくでは、省内の不祥事が次から次へと起きたのも納得がいく。守屋氏は、以前、メディアなどから「三流省庁」と言われた防衛省を一流に押し上げたと持ち上げられたが、一流にはほど遠い役所であることを守屋氏自身が証明してしまった。

◎補完代替医療外来 悩む患者のよりどころに

 能美市の芳珠記念病院が北陸で初めて開設した「補完代替医療外来」は、病気の苦しみ から解放されたいと、インターネットや口コミで流れる民間療法などに関する玉石混交の情報に、半信半疑ながらもすがらざるを得ない状況に陥っている患者やその家族にとって、心強いよりどころとなろう。その成果と、今後の広がりに期待したい。

 インターネットが普及し、海外のあやしげな薬などを個人でも比較的容易に入手できる ようになったこともあって、近年、健康ブームに便乗した健康食品などによる詐欺まがいのトラブルが少なからず発生している。被害は金銭だけにとどまらず、たとえば、二〇〇五年には、ダイエット効果をうたった中国製のサプリメントにより、全国で健康被害を訴える人が相次いでいる。

 現代の医療では根本的に治療することが困難とされた末期がん患者らの「健康を取り戻 したい」という切実な思いに付け入るような、より悪質なケースもある。

 この種の被害を減らすためにまずしなければならないのは、正しい知識を広く普及させ ることである。患者らもそれを求めているはずだ。行政もそれなりに対策を進めてはいるものの、病院が補完代替医療に特化した窓口を設け、専門的な知識を持つ医師が患者らに対応する体制を整える意義は小さくないだろう。

 また、芳珠記念病院の補完代替医療外来では、相談対応といった業務と併せて健康食品 などの市販後調査にも乗り出すという。第一弾には、古くからアマゾンの住民が日常的に飲用しており、抗がん効果を持つとされる薬用植物「タヒボ茶」が予定されている。

 「最近は、この手の植物の名を聞いただけで疑念がわく」という向きもいるかもしれな いが、日本には鍼灸や柔道整復など補完代替医療を積極的に活用してきた歴史がある。あやしいからというだけで、先人が長年の経験の中から導き出した優れた知恵まで埋もれさせてしまうのはもったいない。しっかりとしたデータで効能を証明できたものについては、その適切な利用法とともに積極的に発信し、患者らのために役立ててもらいたい。


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