月明かりの中で果たして…と思いつつ目を凝らすと、覚えのない位置に淡い光が見えた。双眼鏡で確認すると間違いない。ホームズ彗星(すいせい)だ。
百年以上前から存在を知られた彗星だが、先週、たった二日間で四十万倍も明るくなり、肉眼で見えるようになった。本体である彗星の核から大量のちりやガスが噴き出す「アウトバースト」という現象を起こしたらしい。
国立天文台のホームページには三十数年ぶりの珍しい現象とあった。世界の学者が変化に注目しているそうだ。肉眼で見える彗星は夕方か明け方の低空に現れることが多く見にくいが、今この彗星は秋を代表するペルセウス座にあり、見やすい。
何年かぶりで天体望遠鏡を出してじっくり眺めた。真ん中が明るく周囲が雲に包まれた感じで、いかにもガスの噴き出しを思わせた。見え具合でいえば、十年前のヘール・ボップ彗星に負けない壮観な印象を受けた。
ごくありふれた彗星が、専門家も予想しなかった大変化を起こした。急に増光したぐらいだから、急に暗くなるのかもしれない。「かぐや」が月へ飛ぶ時代になっても、宇宙に関する人間の知識などしれたものだ。
天文関連のホームページを見れば位置図がある。ホームズ彗星を眺めながら、宇宙の中で人間がいかにちっぽけな存在か思ってみるのも一興だろう。幸い天気も味方してくれそうだ。