ログイン
IDでもっと便利に[ 新規取得 ]

ジャンル
サブジャンル

海外

農村社会の悲劇訴えた文学 中国で議論に

10月27日21時5分配信 産経新聞


 【北京=伊藤正】中国知識人の間に議論を巻き起こしている小説がある。安徽省合肥在住の作家、曹征路氏が「上海文学」誌6月号に発表した中編「豆選事件」。内陸部農村の村長選挙をテーマに、貧困、不正や封建主義がはびこる現代農村の悲劇を描き、直接選挙が民主政治につながるかが論議の焦点だ。

 小説は主人公の農民、方継仁が若い妻、菊子の妊娠を知り、人工流産させる場面から始まる。継仁は、妻が副郷長(郷は村の上級行政単位)方国梁の子を宿したと疑った。

 国梁一族は祖父の代から村のボスとして君臨、富と権力を一手にしていた。継仁は他の農民同様、以前は農閑期に外地に物ごいに行っていたが、国梁に妻を差し出し、養鶏業の許可を得、人民代表にもなった。

 村で村長選挙が実施されることになった。継仁のいとこの方継武が村に戻り、継仁を立候補させる。対立候補は国梁の息子、方国棟だ。

 小説の題名の「豆選」とは、解放前の延安時代に、文字を読めない農民が豆を候補者の前に投じて選挙した故事による。継武は村民に故事を話し、国梁一族の村支配から脱するよう説得、一方、国棟側は村民をカネで買収し、継武を暴力団に襲撃させた上、警察に逮捕させる。

 選挙は継仁が大勝した。投票の前、菊子が郷長の事務所前で首つり自殺したことが村民の同情を買った結果だった。

 この作品をめぐって、10月7日、北京大学構内でシンポジウムが開かれた。新左派系の「烏有之郷」雑誌社の主催で、有識者が多様な議論を展開、作品が現代農村の現実を描いている点では一致、その改善に直接選挙の効果を肯定する意見が大半だったが、一部で疑問も出された。

 現在、中国各地は農地収用による開発、都市への出稼ぎ農民の激増などで、農村崩壊が問題になっている。それは成長主義の改革・開放の中で「農民が砂のようになり、集団主義が崩壊したことにある」(社会学者の曽世逸氏)。

 作者も、妻の自殺など犠牲を出しながら、継仁が村長に当選したことに希望を表現しながら、国梁一族や継武らがみな村を去り、新村長の下でも何も変わらないと暗示する結末にしている。

 中国の農村では1990年代末から村民委員会委員(村の行政機構で、主任は村長に相当)の直接選挙が制度化され、徐々に実施されるようになった。これがさらに上部行政機構に拡大していくことに民主化への希望を寄せる声は多い。

 しかし、直接選挙では共産党候補が非党員候補に敗れるケースが相次いだ結果、党は一党支配を脅かすと警戒し始めた。先の第17回党大会の報告で、胡錦濤総書記は、「民主」という言葉を乱発する一方、直接選挙拡大には触れなかった。

 この小説は、そうした党支配の下で、農民の悲劇が続くことを訴えているともいえる。

最終更新:10月27日21時5分

  • ソーシャルブックマークへ投稿 1
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • みんトピに投稿
  • はてなブックマークに追加
  • newsingに投稿
  • Buzzurlにブックマーク
  • livedoorクリップに投稿
  • Choixにブックマーク
  • イザ!ブックマーク
ソーシャルブックマークとは

関連トピックス

みんなの感想 この話題についてみんながどう感じたかわかります。

みんなの感想(話題ランキング)

この記事を読んでいる人はこんな記事も読んでいます

日付を選択:



提供RSS
スポンサーサイト検索
海外 中国
韓国 中国 旅行
中国 留学 海外 航空券
韓国 旅行 留学
英会話 海外 旅行