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「炎 予想以上に早く」2消防士殉職/美唄

2007年10月29日

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消防士2人が殉職した火事現場で現場検証する美唄署員や市消防本部職員ら

■消防士2人の遺体を確認/美唄の火事

 美唄市大通の商店街で27日に起きた火災で、同市消防本部は28日未明に焼け跡から2人の遺体を発見、装備などから行方不明になっていた同本部所属の北清(きたせい)幸司消防士長(40)と山岸信貴(のぶき)消防士(25)と確認した。

 美唄署や同本部の調べでは、2人は火災現場となった木造一部鉄骨造りの100円ショップ(閉鎖中)の3階で、空気ボンベを付けて消火活動にあたっていた。予想以上に火の回りが早く、避難しようとした時に3階の床が焼け落ち、そのまま建物のがれきに埋まって焼死したとみられる。

   ◇

■「炎 予想以上に早く」――美唄の火災 2消防士殉職
■木造ビルが老朽化 倒壊の見極め困難

 美唄市のJR美唄駅前の中心商店街で27日夕起きた火災は、ベテランと若手の2消防士の命を一瞬にして奪った。美唄署と同市消防本部は28日朝から、現場検証と遺体の確認作業を始めたが、火元の木造老朽ビルでの火の回りが予想以上に早く、建物倒壊の見極めができなかったことが、消防隊員の避難が遅れた原因ではないかと見て調べている。

 119番通報は27日午後4時41分。火元の旧100円ショップの大看板を、移転のためにバーナーを使って焼き切って外す作業を直前までしていた作業員が、煙に気づいて通報してきたという。

 殉職した北清幸司消防士長(40)と山岸信貴消防士(25)は通報の直後、8人の同僚とともに消防車3台で出動。同45分には現場に着いた。

 建物は一部に増改築した鉄骨部分があるものの、大半が1937年築の木造3階建てで、延べ約2600平方メートルの大型家屋。同消防本部は午後5時すぎには消防車など計15台、約250人態勢での対応を取った。

 先着隊のうち北清さんら7人は1〜3階を手分けして見てまわったが、当初は煙も少なく3階の国道側の壁の端に炎が少し見えた程度だったという。空気ボンベを着けていた北清、山岸両隊員が3階に残って消火作業に当たることにし、他の隊員はボンベ装着のためにいったん屋外に出た。

 他の隊員がボンベを装着するのに要した時間は5分程度という。しかし、午後5時15分ごろ再度建物1階に戻った時には2階部分に炎が迫り、2人が残る3階には「熱風でとても上がれる状態ではなかった」(新田博・当直隊長)という。

 応援隊は懸命に外からの放水を続けていたが、火はおさまらず同37分、3階部分から崩壊が始まった。両隊員はがれきとともに2階に落ちたとみられる。

 「僕が(ホースの)筒先を持ちますから」。北清さんがボンベ装着で離れる上司にそう伝えたのが最後の言葉となった。

 「これほど早く火がまわるのは経験したことがなかった」。部下2人を失った佐藤賢治消防長は唇をかむ。「炎が(古い木造建築特有の広い)天井裏や壁の間で見えないうちに広がっていた可能性がある」という。前線の隊員と現場指揮官の間で交信できる無線システムがあれば、「有効な避難指示が出せていたかもしれない」とも話した。

 北清、山岸両隊員ともに妻と2人の子どもがいる。北清さんは救急救命士として勉強熱心で部下の信望も厚かった。山岸隊員は地元の高校を卒業後、1浪してあこがれの消防士になった。12月に次男が1歳になるところだという。

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