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浜岡原発停止認めず 耐震性の確保認定 静岡地裁判決

2007年10月26日11時15分

 静岡県御前崎市にある浜岡原発は「想定される東海地震の揺れに耐えられず危険だ」として、静岡県や愛知県の住民らが中部電力(本店・名古屋市)に1〜4号機の運転差し止めを求めた訴訟の判決が26日、静岡地裁であった。宮岡章裁判長は「耐震安全性は確保されており、原告らの生命、身体が侵害される具体的危険があるとは認められない」と判断し、原告側の請求を棄却した。仮処分申請についても却下した。原告側は東京高裁に控訴するとともに、仮処分却下については即時抗告する方針。

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不当判決と書かれた板を掲げる原告団=26日午前11時すぎ、静岡地裁前で

 営業中の原発の運転をめぐる訴訟で金沢地裁が北陸電力志賀(しか)原発2号機について初めて差し止めを命じた(昨年3月、高裁で係争中)ことや、7月の新潟県中越沖地震で東京電力柏崎刈羽原発が被災するなど、原発の安全性への信頼が揺らぐ中での判決として注目されていた。

 判決はまず、国の中央防災会議(中防)による想定東海地震(駿河湾などを震源域とするマグニチュード〈M〉8程度の巨大地震)のモデルや東海地震の揺れについて、「モデルは十分な科学的根拠に基づいている」と判断。1〜4号機は新旧の国の耐震設計審査指針を満たしているとして、想定される東海地震だけでなく東海地震と東南海地震、南海地震が連動した場合の地震動に対しても耐震安全性は確保されていると結論づけた。

 続いて施設の老朽化について検討。中電の点検・検査によって機器の「応力腐食割れ(SCC)」の発生を捕捉できる体制が整い、「配管の減肉」などについても点検・管理体制が適切に構築されているとした。

 浜岡原発は東海地震の想定震源域の真ん中にあり、裁判では、地震の大きさや原発の耐震強度をめぐり、原告側、中電側の双方が学者を動員して激しく対立していた。

 原告側が訴訟に先だって仮処分申請したのは02年4月。原発周辺の住民とそれを支援する「浜岡原発とめよう裁判の会」の約1800人が、1〜4号機の運転差し止めを求めた。その後、仮処分の審尋ではできない現地検証や証人尋問をしたいとして27人が同じ趣旨で提訴。03年7月の提訴後に運転を始めた5号機は対象外だった。

 訴訟のさなかに原発と地震をめぐる環境は激変した。05年の宮城県沖地震では東北電力女川原発で、今年3月の能登半島地震では北陸電力志賀原発で、いずれも耐震設計上の想定を上回る揺れを観測。中越沖地震では東京電力柏崎刈羽原発が想定をほぼ全面的に超える国内原発最大の揺れに見舞われた。

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