社説

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録 Yahoo!ブックマークに登録
この記事を印刷
印刷

社説:NOVA 生徒と講師の救済に全力を

 英会話学校最大手のNOVAが会社更生法の適用を申請した。同時にNOVAは全教室の一時閉鎖も発表した。全国に約900の教室を構え、生徒数は約40万人にものぼっていた。過去最大の語学学校の破綻(はたん)とあって、影響は広範囲に及んでいる。

 受講料の過払い分の返還を求めた訴訟で最高裁が今年4月に「特定商取引法違反」との判断を示し、NOVAは敗訴した。さらに6月には、解約手続きなどで18件の違反を経済産業省が指摘し、長期の新規契約を半年間禁止する業務停止命令を受けた。

 解約が続出して給与の遅配や家賃の未納が起こった。さらに、外国人講師を確保できなくなり、教室の閉鎖や休校が相次いだ。

 「駅前留学」を看板に、テレビCMで知名度を上げ、規模を拡大したものの、教室数の増加に講師の確保が追いつかなかった。受講の予約が取りにくくなり、生徒が不満を募らせていた。

 事業規模を適正な水準に修正し、生徒の納得が得られるようにすべきだった。しかし、新規の入校者が前払いで一括して支払う受講料がないと、経営を維持できない体質になっていたのだろう。

 拡大を続けるうち、サービスの質が低下し、解約をめぐるトラブルが相次いだ。行政も黙認できなくなり、業務停止命令を受ける結果となってしまった。

 NOVAは1981年に大阪・心斎橋で創業した。就業規則もなく、レッスンが遅れたり延びても問題にならないというのが実態といい、創業者の猿橋(さはし)望社長のワンマンぶりが目立ったという。

 再建策についても猿橋社長が取り仕切っていたようだが、流通などの企業と資本提携を模索したものの、いずれも失敗した。資金調達計画も不透明で、結局、他の経営陣が猿橋社長を解任し、会社更生法の申請によって、再起を模索する道を選んだ。

 問題は、生徒が前払いした受講料約400億円の大半が返還されないとみられることだ。受講料より支払いが優先する講師や社員らの給与、金融機関などへの返済を差し引くと、NOVAの資産内容からみて、残る部分は、あったとしてもわずかになりそうだ。

 受講料の返還は難しいとしても、NOVAには、知名度の高さや、業界トップの規模というアピールできる部分もある。再建を支援する新たなスポンサーが登場すれば、事業継続も可能なはずだ。

 外国人講師の雇用問題については、厚生労働省が外国人講師の賃金不払いや雇用保険などに関する相談に応じるため、特別の窓口を東京、大阪の労働局に開設した。

 過去に英会話学校が倒産したケースでは、NOVAも含めて大手の英会話学校が生徒を引き継いで、前払い分の授業を行ったこともあったという。

 授業を再開するには、支援企業を早急に決定する必要がある。NOVAは規模が大きいだけに困難が伴うが、同業者による生徒の引き継ぎも含めて、関係者の努力を期待したい。

毎日新聞 2007年10月28日 東京朝刊

ニュースセレクトトップ

エンターテインメントトップ

ライフスタイルトップ

 

おすすめ情報