日本と台湾の歴史 このところ、私は台湾に入れ込んでいる。仕事ももちろんあるのだが、なによりも台湾という国と日本という国の深い歴史的かかわりが、私の興味を惹いてやまない。 台湾、というと「ああ、中国と敵対している国ですね」という程度の認識しか、今の方は持っていないのかも知れない。しかし、台湾のその位置を見れば一目瞭然だが、政治的、経済的には非常に微妙な位置にある。 清朝中国は孫文が主導した辛亥革命で倒され、そこで「民主主義中国」ができた。そして、民主主義中国政府は中国共産党とのたたかいに破れ、台湾に政権を移したが、その直前には、抗日戦争を遂行するため、「国共合作」という歴史的な協定を持ったこともあった。 私たちが学校で習った「台湾の歴史」は、大方このあたりまで、というところではないだろうか? IT産業は日本を凌ぐ台湾 実は日本と台湾は非常に近い関係にあるばかりではなく、おそらくアジアで一番と思われるほどの「親日家」だ。同じ漢民族なのかどうかと思えるほど(台湾の人口の98%が漢民族)、大陸中国と比べて台湾の人で親日的な人は大変に多い。 台湾の人口は現在、おおよそ2200万人ほどだが、国家的な志向をハイテク系産業にいち早く置いたため、台湾のハイテク産業は非常に発展している。2005年には、全世界で使われるFPD(フラット・パネル・ディスプレイ - 薄型の液晶テレビなど)の世界シェアは48%を超え、世界一となった。また、パソコンの本体の中身の中心的存在である「マザーボード」は、現在その80%が台湾製である。また、ルータなどのITで使われる通信機器の世界シェアは89.2%など、世界で使われているIT機器の多くがMade in Taiwanとなっている(2007年10月の財団法人交流協会の資料による)。 台湾企業・日本企業・そして中国 27日に開かれた早稲田大学台湾研究所・台北駐日文化経済代表処のパーティにて。台湾の駐日代表の許世楷氏(撮影:三田典玄) 実際に、台湾南部の巨大工業団地では、日本からチッソ、ULVACといった巨大企業が進出し、大工場を短期間で作り、現地の人員で会社を運営している。チッソは日本では水俣病で有名だが、化学材料の多くで高い世界シェアを持っており、台湾では、台湾で製造される液晶ディスプレイで使われる「液晶」を供給している。つまり、台湾のその工業団地では、日本の技術で作られた「液晶」が台湾の企業で液晶ディスプレイに使われ、できあがった製品としての液晶ディスプレイが世界各国に供給されている、というわけだ。そして、その一部を私たち日本人が買うことにもなる。 よく冗談で「ITはインド、台湾の略」と言われるくらい、台湾のIT産業は発展していて、日本をはるかに凌いでいる。 また、台湾は日本だけと交易しているわけではもちろんない。台湾からの中国投資も増え続けており、2006年には、台湾から中国への投資額はほぼ76億ドル(前年比12.5%増)だった。2007年はさらに増えると予想されている。一方、日本の対中投資額は2006年で46億ドルである。これは前年比で30%近い落ち込みだ。 もっとも日本の中国向け投資や中国での事業展開は、台湾企業を通して行われることも増えている。したがって、このあたりの数字をそのまま読むと、本当の姿が見えてこない。 台湾と中国は戦争を始めるかも?とはよくニュース等で煽られるところだが、今の現状では戦争をすることは大変に難しいことがよくわかる。 本当の台湾の姿を 28日に開かれた日台研究者によるシンポジウム(撮影:三田典玄) 私たちは、ふだん見ているニュースで「台湾」の文字を見ることが非常に少ない。対して、中国の報道は非常に多い。そうすると、ついつい台湾と私たち日本は疎遠で、中国と日本が中が良いように感じてしまう。 しかし、台湾は私たち日本との間に古くから実に緊密な関係を持っている。報道の規制がかかっているため、台湾の本当の姿が私たち多くの日本人には伝わらない、ということもあるのかも知れない。 10月28日から11月2日まで、台湾と非常に関係の深い早稲田大学で「早稲田大学125周年」を祝う記念行事が行われている。この期間中、行事の一環として、早稲田大学・台湾研究所の主催で「台湾文化週間」が行われており、そのすべてのイベントを無料で見ることができる(http://www.waseda.jp/prj-taiwan/sympo.html)。 もちろん、学外からの訪問も簡単にできる。イベントでは台湾の写真展をはじめ、台湾と日本の分けて研究者のシンポジウム、台湾映画の上映など、非常に多くの「台湾」をまとめて見ることができる。こんな機会はそうそう多くはない。 アジア全体の要としての台湾、日本、そして中国の本当の姿を知ることができるこのようなイベントは、今回がおそらく最初で最後になるかも知れない。アジア情勢、アジア経済にご興味のある方は、是非ごらんになることをお勧めする。 このイベントの詳細な内容は、事後に日本語で発行されている「台湾新聞」(www.taiwannews.jp)、「台湾新聞ブログ」(http://taiwannp.mita.minato.tokyo.jp/)でも概要を読むことができる。
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