全国不登校新聞社では、毎年、集会「秋の集い」を開催してきております。今年もも開催させていただくことになりました。今年の集会は「“働く”を考える」をテーマに、作家・雨宮処凛さんを講師に招きます。
若者への行政施策は“再チャレンジ支援”“ニート対策”など、さまざまにありますが、そのほとんどが若者の意欲やスキルの向上を解決策として唱えています。しかし、問題は「個人の努力不足」や「資質」にあるのでしょうか。
雨宮さんは、その点を近著『生きさせろ』(太田出版)で、鋭く指摘しています。
講演では、若者の現状と問題点を語ってもらうとともに、不登校、家出、自傷行為、フリーターという自身の経験も語ってもらいます。
この機会にみなさんと考え合えればと思っております。ふるってご参加ください。

―どんな子ども時代でしたか?
小中学生のころのいじめを機に「どこに行っても私は否定される」「いつ人に裏切られるかわからない」、という不安や人間不信が植え付けられたと思いますね。死にたくて、死にたくてしょうがなかった、生きづらくなって、リストカットや家出をくり返して、親との関係も悪化して、さらに人間不信になってしまう。そうなると、もう何が原因かわからないんですよ。とにかく18歳か19歳のころは死だけが出口で、「いつか死のう」という思いが自分を支えていました。
20歳を越えてすこし楽になった面もありますけど、今度は明確な理由がないのに生きづらさを感じる。「はやく特別な何者かにならなくては」という焦り、復讐と恨みが心をずっと支配していました。30歳になるまで、ずっと生きづらさがピークの状態だったんですね。
―ひきこもりをどう思われますか?
ひきこもりやニートに対して、いまの社会は出口を用意していません。使い捨てのしごとばかり転がっているばかりで、正規のルートから外れた人にとても冷たい社会です。こうした状況に対して、ひきこもりは労働を拒否して革命的に「立てこもり」をしている人だと私は思っています。不登校も教育制度を拒否しているすばらしい革命家。これだけ多くの人が社会に「見切り」をつけている。誰も指導者がいないのに、ずっと前から「社会への拒否」が広がっています。
そろそろ「こんなに社会は崩壊しているんだ」とアピールしてもいい時期なのかなと思っています。これはけっして、当事者だけの問題ではないので、自分たちで言葉を獲得することだと思うんです。自分をがんじがらめにした怒りを、外部に向けた言葉にする。そうすれば、絶対に変えていけますよ。
―若者が置かれている状況についてどう思われますか?
いま「働かざるもの食うべからず」という言葉さえ、通用しなくなっています。ワーキングプアなど、働いたって保障されない問題がはっきり見えてきました。だから、私たちの要求はシンプルに「生きさせろ」と。私が取り組んでいる運動は「プレカリアート」(不安定さを強いられる人々)と言って、すべての人が無条件に生存する権利を求める運動です。いまの社会では、ただ生きることすら認められません。どんな状態であろうとも、ただ生きる自由が欲しい。同じような問題意識を持った人は膨大な数になるはずです。一度、みんなをひっかけて大規模な暴動をしたいですね。
※Fonte2007年1月1日発行号より抜粋