◇30分単位、一時保育もOK 働く親の受け皿にも
長浜市八幡中山町の「風の街ビル」2階に会員制保育園「キッズパーク長浜」(大谷琢央園長)がオープンした。生後6カ月の乳児から就学前の児童を保育し、30分単位で一時保育が可能な県内では珍しいシステム。開設したばかりの同保育園をのぞきに行き、同市内の保育事情を調べた。【野々口義信】
◆開設前に需要調査◆
今月中旬、新しい保育園を訪ねた。日当たりのよい保育室では、7~8人の子どもが英語遊びの真っ最中。胸に英語名札をつけた園児たちが英語講師のお人形遊びに大はしゃぎ。窓際のベビーベッドでは、乳児がすやすやと寝息を立てていた。
開設したのは市内で楽器販売、音楽、英語教室を開設するイケダ光音堂(池田洋社長)で、れっきとした株式会社の1事業部として経営する。池田社長は開設の動機を「音楽講師や英語講師など約80人を雇用しているが、ほとんど女性。出産後の子育てで辞める人が多く、優秀な人材確保のため、企業内託児園の必要に迫られた」と語る。
おいの大谷さんが地元で幼稚園教諭をしていたため、大谷さんを園長候補に。開設前に調査したところ、同市内では保育園の空きを待つ乳幼児がかなりいるうえ、年度途中の入所はほとんど不可能で、夜間保育や託児所など一時保育の潜在希望者もかなりあることが判明した。これらの調査結果を受け、30分単位の一時保育も可能な時間料金制であり、会員制の保育所の開設に踏み切った。
◆細かな時間・料金◆
時間は、昼間(午前8時~午後6時)▽夜間(午後6~9時)▽深夜(午後9時~午前1時)--が基本。定員50人。
月決めの保育料は、昼間と夜間の0歳児の50時間コース3万6000円▽4~6歳児は50時間コース2万5000円。
一日預かりは、0歳児は昼間6500円、夜間2800円。一時預かり(30分)は、0歳児は昼間400円、夜間530円、深夜650円など。
別に入会金5250円と年会費5250円が必要。年齢、保育時間などで細かく料金を設定してあり、保護者の急な残業や外出、冠婚葬祭などにも対応が可能という。
保育時間中は、資格を持つ保育士を国の基準通りに配置。音楽や英語教室を運営する会社の特性を生かし、英語遊びや音楽遊びなどを保育時間に組み込み、独自のカリキュラムを作成。弁当を作る時間のない親のため子どもの給食サービスも用意したり、近くのクリニックと提携し、健康面にも配慮している。大谷園長は「安全、安心な保育に万全を期し、元気で明るい子どもたちを育てたい」と話している。
◆官の代わりに民で◆
市子育て支援課によると、市内には公立保育園が7園、私立保育園が4園の計11園あり、総定員1540人。入所資格は公立、私立とも保護者が昼間働き、保育ができないなど保育基準があり、料金も公立、私立とも同じ。入所についても市が前年秋に公募し、審査のうえ、入所先を振り分けるシステム。所得税額によって決められる保育料も公立、私立とも同一で、保育料はいずれも市が徴収している。
同課によると、10月1日現在、市内の保育園の待機児童は100人。年度途中に市内に転入した子どもの入園は、ほとんど不可能で、厳格な入園基準もある。また、保育園に子どもが預けられないために外で働けない母親もおり、潜在的な入所希望はかなりの数に上るとみられる。
同市内では、09年度から幼保一元化保育が試行される。同課は、0歳児保育の希望が増える傾向にあり、少子化だが、保育需要は続くと分析。キッズパークは他の保育園よりも割高だが、開設2週間で会員が定員50人を超え、順調な滑り出しとなり、会員500人を目指すという。
同課の片山依子課長は「保育料が高めなので希望者があるか疑問視していた。公営ではできない柔軟性が良いのでは」と保育ニーズの多様化を指摘。池田社長は「私たちの保育園がさまざまな生活形態を抱える親たちの受け皿になれる。官にできないことを民でやれるお手本になりたい」と今後の運営に自信を示す。
毎日新聞 2007年10月27日