◎市場化テスト 自治体も具体化へ本腰を
公共サービスの担い手を官庁と民間の競争入札で決める政府の市場化テストの実施結果
によると、社会保険庁の国民年金保険料徴収業務を民間事業者が落札したことで、従来五十八億円かかっていた徴収経費が二十一億円に大幅削減されたという。行政のサービス事業に競争と民間のノウハウを取り入れることによるコスト削減効果は明らかであり、政府は市場化テストの対象事業の拡大を図る一方、地方自治体も導入するよう促している。市場化テストを実施するかどうかは自治体の自主的な判断に委ねられており、石川、富山県などほとんどの自治体はまだ研究段階か様子見の状況であるが、具体化へ一歩踏み出すときではないか。
市場化テストは、いわゆる「お役所仕事」に民間企業を参入させることで、サービスの
向上と効率化を図る狙いである。昨年五月に公共サービス改革法(市場化テスト法)が成立したのを受け、今年度から国民年金保険料の徴収のほか統計調査業務など政府の一部事業で本格実施されるようになった。年金保険料の徴収業務に示される通り、競争入札による経費節減効果が大きいことから、政府は市場化テストの対象事業に、ハローワークの無料職業紹介など二十八事業を追加し、計四十一事業に拡大することにしている。
競争入札で民間に仕事を取られることへの抵抗感もあってか、市場化テストはまだ自治
体には広がっていない。それでも東京都や和歌山県、北海道、倉敷市などの一部自治体が公立技術専門学校での職業訓練、庁舎の管理運営業務、公用車両の維持管理業務などで市場化テストを試みるようになっている。和歌山県の庁舎管理業務は競争入札の結果、予定価格の七割の価格で民間事業者に落札されたという。
財政の健全化は自治体の大きな課題であり、石川、富山も例外ではない。指定管理者制
度などによる業務の民間委託は進んできたが、聖域なき歳出の見直しを迫られている状況であれば、市場化テストも積極的に試みられてよい。例えば、公営住宅の滞納家賃徴収や上下水道施設の管理業務なども市場化テストの対象に挙げられる。先行事例も参考にしながら、まずモデル事業で試行を重ねるのもよいだろう。
◎民宿のブランド化 合宿誘致との相乗効果も
石川県中小企業団体中央会などが、七尾市の能登島の民宿をブランドとして一体で売り
出し、独自のもてなしや新鮮な食材を武器に誘客に乗り出すという。ホテルや旅館に宿泊する一般的な観光旅行とは一味違い、素朴で気のおけない接遇が民宿の魅力であることを考えれば、いま能登の各市町が復興の柱の一つとして力を入れる大学スポーツやサークルの合宿の宿泊施設としても最適であろう。官民が今回のブランド化と合宿誘致を連動させて、誘客に取り組んでみてはどうか。
今回のブランド化は、同中央会と能登鹿北商工会が、来年三月からのスタートを予定し
、能登島の民宿十数軒が参加して、農家から漬け物の漬け方を教わったり、魚介類の食べ比べなどの統一サービスを実施するという。主に首都圏向けに誘客活動を展開する予定だが、民宿をキーワードにした地域限定の企画は、じっくりと旅を楽しみたい団塊世代はもちろん、学生が合宿などで一定期間滞在し、土地の空気を感じ取るという意味でも魅力があるだろう。
能登半島地震により、能登島の民宿も打撃を受けたが、一方、能登では各市町が合宿誘
致に取り組み、地震の逆風を受けながらも、志賀町では四月に新設した県外の高校生以上の合宿に対する宿泊費助成制度の利用実績が、九月末までに予想の倍近くの約千九百人となった。七尾市でも宿泊費を最大で通常料金の半額とするプランを設け、対象を市外の小学生以上にまで広げたことから、四―八月は二千人を超え、昨年度の百四十人を大幅に上回ったという。
こうした優遇のほか、従来から県内では合宿で訪れた県外の学生らに地域色あふれる交
流の場を提供しており、白山市内で夏季合宿した立命館大の体育系部員が国重要無形民俗文化財の「でくの舞」を体験したように、地元の祭りやイベントと組み合わせた思い出づくりを企画しているところもある。
このような石川独自の合宿誘致の試みの一つとして、「うまい料理」と「感動のサービ
ス」を柱とした能登島民宿ブランドもインパクトがある。市と連携して大学などに呼びかけたい。リピーター確保の「種まき」としても大いに期待できよう。