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2007年10月29日

 このところの本紙・地鳴り欄で人気の高いのは「サツマ芋」と「孫」の話である。この二つのテーマが重なって「孫の芋掘り」になることもあり、平和な空気が紙面に漂う

ほのぼのムードに水を差すつもりはないのだが、同じ芋掘りでも辛くせつない記事があったことを紹介したい。六十二年前の終戦の年の秋、金沢市郊外粟崎の芋畑で当時の記者が見た光景である

収穫を終えて暗くなった芋畑に、街から来た多数の主婦が入り込み、農家が掘り残したクズ芋を必死に拾い集めていたというのである。空腹に泣く子どもたちの顔が浮かぶのか、農家の人たちも見て見ぬふりだった

古い話を持ち出して恐縮だが、終戦直後の窮乏は、戦争中以上に悲惨だったことを物語っている。戦後の日本女性は強くなったと言われる。母は元々たくましく、ましてこの辛さと惨めさを乗り超えれば強くならないわけがない

「芋のしっぽ」で命をつないだのは他でもない、平成の今、初孫を抱いている世代である。飢えの代名詞だったサツマ芋も飽食の時代では健康食品の一つである。秋の実りとともに、親のありがたさをかみしめたい。


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