劇団「燐光群(りんこうぐん)」を主宰する岡山市出身の坂手洋二さんは、現代日本を代表する演劇家の一人です。国内外で刺激的な舞台の上演を続け、十一月二日から岡山県内で開かれる「全国生涯学習フェスティバル」で開会式の演出を担当するなど、活躍の幅は広がる一方です。
劇団創立二十五年の節目を記念した新作が十一月十五日、岡山市の市民文化ホールで上演されます。タイトルは「ワールド・トレード・センター」。世界貿易センタービルが狙われた二〇〇一年九月十一日の米中枢同時テロに焦点を当て、その日の出来事や隠された事実に触れるなど、“ドキュメンタリー・ドラマ”としての側面も持つ作品といいます。
坂手さんは「屋根裏」で引きこもりを描き、「最後の一人までが全体である」では大学の自治や教育問題を扱うなど、テーマ設定から「社会派」と称されます。
二〇〇三年に岡山でも上演された「CVR チャーリー・ビクター・ロミオ」は、日航機事故など実際に国内外で起きた航空機墜落事故の操縦室のやり取りを、音声記録(CVR=コックピット・ボイス・レコーダー)を基に再現。極限状況下で死力を尽くすパイロットたちの姿は緊迫感にあふれ、迫真の舞台に観客の一人として引き込まれました。
「社会との関係なくして作品、人間ドラマは成り立たない」。ジャーナリスティックな視点で話題作を次々発表する坂手さんは以前、インタビューした際にこう答えました。新作ではどんな舞台を見せてくれるのか、楽しみです。
(社会部・中田秀哉)