英会話学校最大手のNOVAが、大阪地裁に会社更生法の適用を申請し、地裁は財産の保全管理命令を出した。経営破たんによって、全国の教室は一時、休講する。
負債総額は七月末現在で約四百三十九億円とされる。NOVAは、キャラクター「NOVAうさぎ」を使って「駅前留学」などのテレビCMを積極的に行い、全国に教室を展開した。同業他社より安い受講料もあって、経営は急拡大した。ピーク時の二〇〇五年度には受講生数がNOVA発表で四十八万人、〇六年の教室数は千近くに達した。
一方で、解約者が起こした受講料返還訴訟で敗訴するなど、受講契約や中途解約時の返金をめぐる受講生とのトラブルが相次いだ。六月中旬には、受講契約時に虚偽の説明をしていたなどとして経済産業省から一部業務停止命令を受けた。
信用を低下させ、受講生離れを招いたことで業績は急速に悪化した。資金繰りに窮し、外国人講師への給与支払いが遅れたり、各地の教室の賃借料が払えなくなったりする事態となった。教室の閉鎖や休講に追い込まれたところも多く、教室数は今年三月末の九百余りから今月下旬には約六百七十に減った。
泥沼状態に陥った背景には、創業者の猿橋望社長のワンマン経営があった。経営に行き詰まっても周囲の意見を聞かなかった。再建のために資本・業務提携の動きがあっても、猿橋氏が経営陣に残ることが壁となって立ち消えるケースが目立った。
今回の更生法申請は、猿橋氏を除く取締役三人が臨時取締役会を開いて社長を解任したうえでの行為だった。クーデターである。理由は、経営難になっても猿橋氏から十分な説明がなく、今後も「業務執行を委ねるのは不適当と判断した」とする。猿橋氏には、破たんさせた経営責任が厳しく問われよう。
今後の焦点は、再建に向けて支援企業を見つけられるかどうかだ。候補として数社の名前が挙がっているとされるが見通しは立っていない。保全管理人は、一カ月以内に決まらなければ破産手続きを取る方針だ。時間は限られる。
破産すれば、現在の約三十万人余りの受講生が被害を被り、外国人講師ら数千人の教職員が職を失う。外国人講師の中には、家賃が払えず住まいを追い出されるなどの人も出ている。社会的混乱が起きかねない。
経産省は業界団体に対して、受講生引き受けなどの支援を要請する方針だが、救済に国も積極的にかかわっていく必要があろう。
東海地震が起きれば、中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)は大きな被害を受けるとして地元住民らが1―4号機の運転差し止めを求めた訴訟の判決で、静岡地裁は原告側の請求を棄却した。原告側は直ちに控訴した。
浜岡原発は東海地震の想定震源域の真ん中にある。住民側は、中部電が耐震性の根拠としている国の中央防災会議が想定するマグニチュード(M)8クラスの地震を大きく超えるM9クラスの地震発生と、それに伴う放射能被害の危険性を訴えてきた。
判決は、中央防災会議のモデルについて科学的根拠に基づいているとした上で、「中部電が定めた最大の地震が起こす揺れの基準地震動は妥当」とした。老朽化への懸念にも「点検、管理体制は適切」とするなど中部電側の主張を全面的に認めた。
七月の新潟県中越沖地震では、東京電力柏崎刈羽原発で放射能漏れなどのトラブルが相次いだ。震災と原発の安全性が問われる中での司法判断だけに注目されたが、住民側には厳しい結果となった。
運転差し止めという事態を免れた中部電はじめ電力会社は、ほっとしていることだろう。だが、柏崎刈羽原発のように想定を上回る揺れに見舞われるケースは多い。現行基準に照らして出された今回の判決が、今後襲ってくるかもしれない大規模な地震に対する住民の不安を払しょくし得るものとはいい難い。
地震列島に立つ原発は、安全性への細心の注意が求められる。住民の不安を解消するため、国や電力会社は安全への研究を深め、新たな知見を踏まえた対策の見直しを重ねるとともに、情報開示によって透明性を高めていくことが重要だ。
(2007年10月28日掲載)