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【社会】

「軍強制」の記述復活させ訂正申請へ 沖縄戦集団自決で教科書1社

2007年10月28日 朝刊

 沖縄戦の集団自決への日本軍関与をめぐる教科書検定問題で、検定意見の付いた教科書の出版社五社のうち一社は、「日本軍によって『集団自決』を強いられた」など日本軍の強制性を復活させ、削除の経緯などについても記述することで十一月二日ごろまでに訂正申請する方向で調整していることが分かった。五社はいずれも訂正申請する方向だが、具体的な検討内容が明らかになったのは初めて。

 執筆者の高校教諭坂本昇さん(51)が二十七日に記者会見し明らかにした。「日本軍によって強いられた」を「日本軍によって追い込まれた」などの表現にする可能性もあるという。さらに、今年の教科書検定で、日本軍の強制に関する記述が消えたことや、九月に沖縄県で検定意見の撤回を求める十一万人規模の県民大会が開かれたことについても教科書に書き込む方向で調整が進められているという。

 坂本さんが執筆した当初の記述では「日本軍がスパイ容疑で虐殺した一般住民や、集団で『自決』を強いられたものもあった」としていた。これに「誤解するおそれがある」との検定意見が付き、「そのなかには、『集団自決』においこまれたり、日本軍がスパイ容疑で虐殺した一般住民もいた」と修正し、合格していた。

 教科書では、渡嘉敷島民の集団自決の手記の一部を資料として引用しているが、訂正申請では「軍から命令が出たとの知らせがあり、いよいよ手榴(しゅりゅう)弾による自決が始まりました」などの部分も追加することを検討している。

 五社は既に文部科学省に手続きの相談に訪れている。来月初めから、遅くても上旬までには訂正申請するとみられる。同省では、これを受け教科書検定審議会の日本史小委員会を開いて意見を聞き、訂正申請の承認について最終的には社会科や地歴科を担当する第二部会が判断する。渡海紀三朗文科相は遅くとも年内に結論を出すことや、審議会として沖縄の専門家の意見を聞く可能性があることを明らかにしている。

◇修正極めて異例

 教科書は教科書検定審議会の審議を経て、三月下旬から四月上旬に合否が決定され、翌年四月から使用される。決定後に字句や図表の訂正、内容の誤りなどがあった場合は教科書会社が文部科学省に訂正申請する。単純な誤記などは文科省の教科書調査官が修正を認めるが、記述の趣旨が変わるような内容の修正は検定審で再審議することもある。

 訂正申請を受けて検定審が再審議し、修正が認められるのは極めて異例。

 

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