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批判を封じ込めようと躍起のRCCが抱える問題点

「こんな調査はおかしい。どうなっているんだ」


 と声を荒らげるのは、朝日新聞の編集委員山田厚史氏。かてねから、整理回収機構(以下RCC)に毅然たる信念で、健筆を展開してきた。RCCを正面から批判するという、大手マスコミの中では、数少ない記者である。


 山田氏が声を荒らげたのは、8月21日の朝日新聞の記事だ。本誌でも、栃木県・川治温泉「柏屋ホテル」を倒産して債権を回収するというRCCの手法、その現場で権力をカサにきた「横暴」とも言うべき対応を報じてきた。山田氏も今年4月8日、4月21日に柏屋ホテルについて、本誌と同様に批判的な記事を執筆した。(巻末資料参照)


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『朝日新聞』8月21日付紙面


 それについて、RCCは朝日新聞社の「報道と人権委員会」に申立を行った。その結果が8月21日朝刊で報じられたのだ。山田氏の記事に「誤解を与える」などとして、RCCの主張を一部認めたのである。


「ジャーナリズムとはいったい何なのか」


 と山田氏は怒りを露にし「ジャーナリズムが守るべきは誰の人権か」 というタイトルの反論を送ってくれた。


 RCCは記事中で「ハゲタカ」という表現が読者を誤導すると訴えた。報道と人権委員会も「こうした言葉の使用には慎重さが求められる」と問題視した。


 先月および先々月の本欄座談会出席者の一人である北健一氏が直接、破産管財人を取材した時に、破産管財人自らが「RCCはハゲタカみたいだ」とこの事案について認めているのである。


 山田氏の取材に応じた人物は「自分だけうまい汁を吸う。まるでハゲタカです」とコメントしている。


 これに対して、破産手続きは裁判所や管財人が関与するため「RCCが勝手にうまい汁を吸えるわけではない」というRCCの主張を報道と人権委員会は追認。「破産制度の知識が十分ではない」と山田氏の取材に応じた人物についてそう結論づけている。


 しかし、管財人をしてRCCが「ハゲタカ」と認めているのだ。そして、北氏のインタビューでは、柏屋ホテルの破産手続きの後、旧経営陣の代わりにやってきたマネージメントサポートという会社については、


「RCCが連れてきた。田舎弁護士がそんな会社は知らない」


 と管財人は説明しているのだ。


 管財は中立な形で行われなければならないのが大原則だ。それを、破産申立を行った側が連れてきた会社が手がけるというのは、問題であることは明白だ。


 RCCが「うまい汁」を吸うべく、裏で画策していると思われる素地はあるのだ。


 本ウェブの取材に応じてくれた柏屋ホテルの運営会社「湯けむりの里」の平田正春氏は、こうも言う。


「私がRCCといろいろ話をしていた時に、RCCの人が突然、裁判所に電話していたんですよ。今思えば、宇都宮地裁の園尾さんという裁判官だと思う。時間は午後6時をすぎていました」


 午後6時というのは、裁判所の代表電話は通じない時間だという。直通電話もしくは携帯電話でやりとりしたのか。不透明なものが感じられる。


 そして、今年3月に柏屋ホテルのオーナーである片山則夫社長についてRCCが破産を求めた時の審問の時だ。3人の裁判官が審理をするのに、なぜか宇都宮地裁の園尾隆司所長がなぜか出席しており、まったく関係ないのに、片山社長にビシバシと質問を浴びせているのである。その結果、破産申立を認めているのである。


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柏屋ホテル


 ちなみに、人権と報道委員会のメンバーで弁護士の本林徹氏と園尾所長は「破産法」(青林書院)という出版物では、園尾所長は著者、本林氏は執筆者として名前を連ねているのだ。


「本林氏と園尾所長、どちらも破産法の専門家とも言えます。また、別の破産などに関する法律関係の書物でも二人が同じ本に執筆しています。その本にはRCCと関係が深い弁護士も執筆している。本林氏との関係があったから、RCCはあえて人権と報道委員会に訴えたんじゃないかと思えてなりません」


 と椎名麻摩枝弁護士は指摘する。


 山田氏も前出の「反論」で、


「気になったことは委員3人の合議にもかかわらず、私に質問したのは99%本林徹委員でした。RCCの主張にほぼ沿った質問でした。(中略)RCCや宇都宮地裁の考え方と極めて近いお考えを持っているようで違和感を覚えました」


 と指摘しているのである。


 RCCが「ハゲタカ」という表現が「問題」なのだろうか。


 平成14年11月12日、衆議院財政金融委員会で、竹中平蔵金融担当大臣・経済財政政策担当大臣(当時)は

「ハゲカタというのは何を意味しているのかということなのですが、基本的には、非常に弱みにつけ込んで荒っぽい商売をして、いわば暴利を得ているようなイメージ」


 とハゲタカの「定義」をそう説明した。


 まさに、柏屋ホテルでのRCCのやり方は竹中大臣の説明とぴったりと一致すると感じるのは私だけだろうか。


 平成17年2月2日の衆議院予算委員会で民主党の田中慶秋議員(当時)は、


「整理回収機構、まさしくハゲタカ軍団と言われるような形で表現されている」


 と指摘した。それに対して、竹中大臣は特に反論をしていない。


 「ハゲタカ」どころか、それを上回る「死刑」という表現が何度も出ている。本欄でも既報の通りRCCに債権が送られること自体が「死刑」だと国会ではとりあげられているのだ。。平成14年1月25日の衆議院財務金融委員会では、柳沢伯夫金融担当大臣(当時)は、


「RCCに送られたものが死刑宣告だという話はちょっと昔の話でございまして」


 と死刑宣告であった時期があることを認めているのである。


 今回の記事、事案とは違うにせよ「死刑」「ハゲタカ」と言われ、自分たちの都合で抗議、反論したり、押し黙ったりするRCC。私の目には身勝手に映る。


 かつてRCCの幹部だった人物は、その裏事情をこう説明する。


「山田氏はメジャーなマスコミでは、RCCに一番厳しいでしょう。何とかアクションを起こして、対抗したかったようです。本音で言えば、批判を封じ込められないかという思惑もあったんじゃないかな。朝日新聞側からの結論に『一部でも主張が認められてよかった。しばらく記事も出なけりゃいいが』とRCCの人間が話していましたから」


【参考】
RCCが申し立てた山田氏の記事(朝日新聞2007年4月8日朝刊)

破産させ、債権回収 ホテル・旅館を処理 整理回収機構

 
 不良債権を銀行から買い取って貸付金を回収する整理回収機構が、借り手の会社や経営者ら個人を破産させて回収を急ぐ姿勢を強めている。立て直しが遅れるホテル・旅館の処理に使うケースが目立つ。機構は「営業譲渡を迅速に進めるため」と説明するが、売掛債権を帳消しにされる出入り業者などから「機構は身勝手だ」との批判も出ている。 (編集委員・山田厚史)


 整理回収機構は2月15日、栃木県日光市川治温泉にある柏屋ホテル(片山則夫社長)への破産手続き開始を、宇都宮地裁に申請した。


 機構は直接の債務者であるホテルに加え、片山さんと、母で女将(おかみ)だった片山芳子さんにも、連帯保証を理由に個人破産を申し立てた。「突然でビックリした。85歳の母までとはひどすぎる」。同地裁が即日保全命令を出し、社長も解任された片山さんは言う。芳子さんは心労からホテルに隣接する住宅で寝込んでいるが、立ち退きを迫られている。
 柏屋は1926年創業の老舗(しにせ)旅館。地元の足利銀行からの融資で94年に新館を建てたが、バブル崩壊で経営が悪化。05年に19億円の債務超過に陥った。


 片山さんは東京の住宅など私財を売り6億円を返済。だが、足利銀の経営破綻(はたん)で残債28億円は機構に売られた。


 ●「ハゲタカ」と、地元ため息


 ホテルの出入り業者には、「2月14日以前に発生した債務の支払いはできません」とのFAXが届いた。業者の会の内田晃代表は「事前に何の相談もないまま、FAX一枚で債権カットとはあんまりだ」と憤る。客足の遠のく冬場は売掛金の回収を控え、5月の連休明けに払ってもらうのが慣行という。大きな旅館に地域経済がぶら下がっている。長年食材を納める業者の一人は「破産で業者の債権を帳消しにして、自分だけうまい汁を吸う。まるでハゲタカです」という。


 批判に、機構の山川隆久・常務執行役員は「破産は事業再生のため。今後の展開を見て判断してほしい」と反論する。石川県の山代温泉や宮城県の遠刈田温泉でも、旅館を破産させて営業譲渡した実績がある、という。ただ、柏屋は、営業を続けながらの破産手続きという初のケースだ。


 破産の手法を採った理由として機構は、(1)時間がたつと設備が劣化し営業が困難になる(2)旧経営者(片山さん)の協力が得られなかった(3)妨害を排除し迅速に処理する、などを挙げる。柏屋が税金を滞納し、税務当局が預金や売掛金を差し押さえる可能性もあるため、手続きを急いだという。柏屋は、ホテルの営業を昨年2月から運営会社「湯けむりの里柏屋」(平田正春代表)に委託し、倒産しても引き続き稼働できるようにしていた。破産手続きで転売への障害がなくなると見ていた機構は、「湯けむりの里」についても破産を申請するなど、事態は泥沼化している。 湯けむりの里の代理人・高橋直弁護士は「事業再生というが、機構は資金回収が目的の会社。自分の取り分だけ増やすのは問題だ」と批判する。 国会でも「公的機関なのに、債務者の人権を脅かすような取り立てをしている」との批判が出された。河村たかし衆院議員(民主)は、「連帯保証人まで個人破産に追い込むのは破産の乱用だ」などとして、機構の回収方針をただす質問主意書を昨年12月、提出した。


 機構は06年まで7年間に、元本4兆460億円の債権を1割未満の3557億円で買い入れた。これを高く転売して7年間に稼いだ差益は、1747億円に上る。機構の利益は国庫に入る。「病人の布団をはぐような回収はしない」(中坊公平・初代社長)という方針から外れ、収益追求に走りすぎている、と指摘する関係者は少なくない。


 <訂正>
 8日付「整理回収機構、破産させ債権回収」の記事で、高橋直弁護士のコメントとした「事業再生というが、機構は資金回収が目的の会社。自分の取り分だけ増やすのは問題だ」の部分は、椎名麻紗枝弁護士のコメントに訂正します。


朝日新聞の人権と報道委員会の結論を受けたRCCの見解


平成19年4月8日付け朝日新聞朝刊9面、週刊朝日2007年5月4・11日合併号、平成19年4月24日付け朝日新聞朝刊10面にそれぞれ掲載された当社に関する記事について、当社は、朝日新聞社に対して、朝日新聞社「報道と人権委員会」における調査、並びに朝日新聞において当社の主張を掲載する機会を設けることを要求した通知書を送付しておりました。


 平成19年8月21日付け朝日新聞朝刊12面で、当社申立てに対する「報道と人権委員会」の見解の要約版が掲載されましたが、ここに全文を掲載するものです。


・「整理回収機構の申し立てに対する見解」朝日新聞社報道と人権委員会


 今回、当社が本申立てを行ったのは、当該記事が一方の当事者の立場に偏って事実を正確に記載しておらず、本来、行ってはならない裁判所の執行を妨げる行為等を行った者を擁護する内容となっていて、不正な行為を容認するものと判断せざるを得なかったからです。


 委員会見解において、当社主張の一部が退けられたことは残念ですが、批判記事を掲載する際には、報じる事実が正確であること、批判の根拠に合理性があること等が必要であるとしたうえで、4月8日付記事に種々の問題点があることを明確に指摘したことは評価したいと思います。


 朝日新聞社がこれからもこの基本的な姿勢を堅持し、公正な報道をされることを心から期待するものです。
 なお、当社におきましては、今後とも、衡平、公正を旨とする批判に対しては謙虚に耳を傾け、常にコンプライアンスに配慮しつつ、与えられた使命を果たすため全力を尽くしていく所存です。


リンク 整理回収機構の見解 
http://www.kaisyukikou.co.jp/oshirase_007.html

リンク 朝日新聞 人権と報道委員会の見解 
http://www.asahi.com/shimbun/prc/20070821.pdf




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