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産科医“偏在”一段と 県南、阿見に診療所 県北は「光明」見えず |
2007/10/28(日) 本紙朝刊 総合1面 A版 1頁 |
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産婦人科医不足が全国的に叫ばれる中、阿見町で十一月、出産を扱う診療所が開所する。県南地域では九月にもつくば市内に産科診療所が開所しており、減少し続ける出産医療機関の確保に一筋の“光明”となっている。一方、県北地域では中核を担う病院の医師不足が懸念されるなど、出産をめぐっても「南北格差」が顕著になってきている。
阿見町荒川本郷に十一月一日開所するのはまつばらウィメンズクリニック(松原健二院長)。木目調の目隠しが付いた四角いモダンな二階建てが目を引く。中にはホテルの一室のような病室が並ぶ。
松原院長は群馬県出身の三十七歳。土浦協同病院(土浦市)の勤務医から独立した。内覧会を開いた二十七日、「正直、婦人科だけにしてお産はやめようか迷った。大変なところに飛び込んだ気持ちだが、女性の一生を見られるかかりつけ医を目指す」と語った。
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県産婦人科医会(石渡勇会長)によると、県内の出産医療機関は一九九五年に病院、診療所、助産院合わせ百一あったが、昨年は五十四とほぼ半減した。
二〇〇五年以降の減り方が激しく、▽新臨床研修制度(〇四年開始)による病院から大学病院への産科医引き揚げ▽診療所の後継者不足▽産科の訴訟リスクの高さ−などが原因とみられる。
少子化により県内の出生数も九五年二万七千五百十七人から〇五年二万四千五百十三人に減ったが、減少幅は一割程度にとどまる。
もともと本県は産婦人科医が人口十万人当たり六・六人で全国四十二位(〇四年)と少ない。特に県北の出産をめぐる状況は厳しく、医療圏別に見ると、日立地区(日立、高萩、北茨城の三市)は同四・九人で、同十一・〇人と県内で最も多いつくば地区(つくば、常総、つくばみらいの三市)の半数にも満たない。
石渡会長は「土浦、つくばは都心に近く、医療システムも充実し安心して医療を行う環境ができている。だが人口減少地域では逆の現象が起き、地域格差が進んでいる」と指摘する。
本来はリスクの高い妊娠や出産を扱うべき総合周産期母子医療センターで正常出産する数が増えて救急対応も困難になるなど、開業医減少のしわ寄せが広がり始めている。
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出産可能な医療機関が四つしかない日立地区では、医師が激務となり、妊婦の里帰り出産も難しくなっている。かつて出産を担った医師は高齢化が進み手を引いている。
総合周産期センターを補完する「地域周産期母子医療センター」に指定されている日立製作所日立総合病院(日立市)では今秋、産科医不足の懸念が表面化。県医師会などは十月一日に記者会見し「日製日立病院が産科をやめると県内全域に影響が及ぶ」と、“出産難民”が生じかねない窮状を訴えた。
「医者が那珂川を越えて(北に)行かない」。県央地域の医師は「県北の高校は医学部に行く子どもが少なく、地元へのUターンも期待できない。医師を育て呼び込むための教育水準向上を考えるべきだ」と、中長期的な医師確保策の必要性を指摘する。
出産をめぐっては妊婦の救急受け入れ拒否問題が全国で発生。県内でも今年、最大で計十五の医療機関に受け入れ拒否されたケースがあった。
出産、救急体制の危機について、県が設置した救急医療対策検討会議の座長で前筑波大付属病院長の山口巖・県顧問(医療改革担当)は「医療者全体で立ち向かわないと問題は解決できない」と話している。
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