現在位置:asahi.com>社説 社説2007年10月28日(日曜日)付 政治とカネ―民主党はぐずぐずするな「政治とカネ」をどう透明にしていくか。政治資金規正法の改正をめぐる与野党の協議がなかなか前に進まない。 すべての支出を透明にするため、1円に至るまで領収書などの裏付けを求める。この点では自民、公明の与党と民主党は一致している。 違うのは、その領収書を公開するかどうかの点である。 自民党の案は、公認会計士のような中立の立場の人がすべての領収書をチェックする仕組みで、一定額以下の領収書は公開しない。 さらに、「第三者機関」を総務省に置き、チェックする人の認定や検査の方法、どの支出をどの項目に区分けするかの指針などをつくるとしている。 つまり、領収書は極力公開したくないということだろう。政治資金を何に使ったか知られてしまう。政治活動の自由が失われる。そんな理由をあげる。 一方、民主党など野党や公明党は、すべての領収書を収支報告書に添付し、国民に公開する案を主張している。 こちらの方がはるかに単純であり、透明性も高い。 地に落ちた政治への信頼を立て直すには、国民の監視と批判にすべてをさらす覚悟を見せるべきだ。そもそも政治資金には、年間300億円を超える税金が投入されているのだ。 すべてを公開すれば、わざわざ第三者機関をつくる必要はない。チェックが必要だというなら、民主党が公認会計士らによる監査を内規で義務づけているように、政党が自ら対応すればいい。 自民党は、全面的な公開に対し「作業の量が膨大になる」などと反論する。だが、国民への情報公開に必要な費用は、民主主義に欠かせないコストだと受け止めるべきだ。 コストの肥大化を防ぐ簡単で効果的なやり方がある。だれでも自由に閲覧できる環境をつくることにほかならない。 与野党ともに、領収書を情報公開制度の対象とし、請求があれば公開することを検討している。だが、それではコピーなどで行政側にかなりの人手や手間がかかってしまう。見たい人は、総務省など特定の場所で閲覧できるようにしておくのが最も手間いらずだろう。 それにしても理解に苦しむのは民主党の態度だ。独自の改正案をいち早くまとめたのに、なかなか国会に出そうとしない。そのうえ、与党が求める政党間協議にも応じないという。 民主党は、与党との「密室協議」には応じないと言っている。ならばなおさら、多数を占める参院に早く改正案を出し、堂々と論戦に挑むべきだ。 駆け引きを考えているようだが、法案も出さない、与党との協議もしないでは、「本音は法改正がいやなのか」と勘ぐられても仕方がない。 民主党は、この国会での法改正実現にもっと積極的に動くべきだ。 生活センター―縮小は時代に逆行する悪質リフォームや振り込め詐欺、湯沸かし器による中毒事故――。さまざまなトラブルの相談に乗り、全国に注意を呼びかける。そんな役割を担ってきた国民生活センターを縮小する案が打ち出されている。 100人余りの職員がいるセンターは4年前、特殊法人から独立行政法人となった。いま政府はすべての独立行政法人について、廃止もにらんだ合理化を進めている。センターもその一つとして見直しを迫られているのだ。 所管する内閣府は「消費者トラブル解決の中核的機関」とセンターを位置づけながらも、消費者からの相談を直接受けつける窓口を廃止したり、商品の性能や安全性を確かめるテストを大幅に外部化したりする方針だ。 独立行政法人には、多額の税金がつぎ込まれている。むだな仕事をなくし、民間でできることは民間にまかせるのが当然だ。「天下りの温床」の状態もそのままにしておくわけにはいかない。 そうしたことはよくわかったうえでなお、内閣府の示したセンター縮小案には賛成できない。 特に疑問があるのは、消費者に開かれてきた直接相談の窓口をやめることだ。 センターは消費者の訴えに、じかに耳を傾けることで、その時々の被害にアンテナを張ってきた。こうした相談業務は根幹の仕事だ。やめてしまったら、新たな被害の芽を見つけにくくなる。 都道府県などの消費生活センターで解決できない相談を引き取る役割は残すというが、直接の相談をやめれば、問題解決の能力まで落ちないか心配だ。 商品テストを大幅に外部化することについても疑問がある。企業とはかかわりのない中立的な機関が性能や安全性の試験をする意味は大きいからだ。 新しい商品やサービスが次々と登場し、消費トラブルは複雑になる一方だ。それなのに、消費者を守る仕事を縮小するのは、時代に逆行しないか。センターのあり方を見直すというのなら、消費者行政の中でセンターが何を担うべきなのかという議論から始めるべきだ。「はじめに縮小ありき」ではいけない。 もちろん、国民生活センターには改善すべきところがいくつもある。 何よりも、情報発信を素早くすることだ。昨年、子どもがシュレッダーに指を引き込まれる事故の情報が入っていたのに、公表は経済産業省に先を越された。こんなことでは信頼されようがない。 内閣府は、センターが発行している二つの雑誌を1誌に統合する考えだが、こうした方向はやむをえないだろう。 福田首相は国会の所信表明演説で、国民の安全・安心の大切さを強調し、「消費者保護のための行政機能の強化に取り組みます」と語った。 その言葉が本心から出たものならば、国民生活センターを弱体化させるようなことはできないはずだ。 PR情報 |
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