2007年10月03日 更新
巨人がサヨナラで5年ぶりV奪回!原監督、涙…「最高です」
原監督舞う 時が止まった。苦しかった分だけ高く舞う。長かった分だけ思い切り笑ってやる。原監督が本拠地で至福の瞬間を迎えた。ついに、ようやく、巨人優勝−(撮影・春名中)
(セ・リーグ、巨人5x−4ヤクルト、最終戦、巨人14勝10敗、2日、東京ドーム)『奪回』の公約を果たした。優勝マジック「1」としていた巨人は2日のヤクルト戦(東京ドーム)で敵失から5−4で逆転サヨナラ勝ち。5年ぶり31度目のセ・リーグ制覇(1リーグ時代9度)を決めた。原辰徳監督(49)は2度目の優勝で初めて本拠地の宙に舞い「最高です」と連呼。日本シリーズ進出をかけ、18日からのクライマックスシリーズ第2ステージで中日−阪神の勝者と対戦する。
◇
野球の神様が舞い降りた。突然ころがりこんできた優勝に、原監督の目が丸くなり、うっすらと潤み始めた。九回二死満塁で清水の遊撃内野安打を宮本が一塁へ悪送球。李承ヨプと阿部が相次いで本塁を陥れ逆転サヨナラ、優勝だ。あわててグラウンドに飛び出した原監督に選手が群がる。初めて味わう本拠地・東京ドームでの胴上げ。実数発表で最高となる4万6260人の声援を一身に浴び、3度宙に舞った。
「苦しい年を4年経験し、悔しさをぶつけて戦ってくれた。最高です。選手一丸となり、ファンと分かち合うのが夢でした。最高です」
素直にうれしさを表した。高橋由の開幕戦初球本塁打で始まり、中日、阪神との激闘となったシーズンの143試合目。平成15年9月26日、渡辺恒雄オーナー(現球団会長)に「読売内部の人事異動」と言い放たれた退任会見から1467日。恩讐を乗り越え、原監督が5年ぶりにセ・リーグの頂点に立った。
主砲・松井秀を軸に長嶋政権の財産を引き継ぎ、就任1年目で日本一に輝いた02年とはまったく状況が違う。2度目の歓喜はすべて自らの手でつくりあげた。監督復帰初年の昨季、主力の故障者続出で4位に終わったのを受け、今季のテーマを「奪回」に決めた。続いて大量23選手の背番号を変更。17番から「左のエースナンバーだ」と21番に変えた高橋尚、21番から「トム・シーバー(メッツの名投手)のような豪腕になれ」と41番にした木佐貫らに奮起をうながした。
仕上げは2つのサプライズ。こちらは不動の背番号を与えた投打の生え抜き主軸を配置転換した。主に3番を打ってきた高橋由を切り込み隊長の1番に抜擢。先発で102勝を積んできたエース上原を抑えに転向させた。巨人の弱点を克服するため、決断した。
「やろうとしても、なかなかできることではない。積み上げてきたものがある選手たちだし、お互いが納得しないとできない。とことん話し合ったよ」
自身は甲子園を沸かせた高校時代からのスターだが“カリスマ”ではないと冷静に見る。だからこそ選手との対話を重視した。4月25日、東京ドームの監督室で上原に話を切り出した。抑えの豊田が不調のチーム状況を説明し、開幕前に両足の太ももを相次いで痛めた上原の気持ちを聞いた。「足に不安がなくなるまで、ストッパーをやってみないか」。指揮官の情熱にエースも心を動かされた。
その後も「今季終了まで抑えをしてほしい」と説得を続けた。返事を保留する上原を待ち続けて1カ月。2人が握手したのは6月15日。このとき、優勝への道が開かれた。壮大な環境づくりこそが07年の原マジックだった。
その一方、自ら耳を傾ける姿勢も忘れない。後半になって投手陣が崩れかかった頃、東海大相模高、東海大での師である父・貢さん(72)にアドバイスをもらった。故・藤田元司、長嶋茂雄の両監督よりも、監督として最大の手本とするのが父だからだ。
「阿部のリードは変化球が多すぎる。投手の基本はストレート。スピードで押させないといかん」。これが父の考え。“親子鷹”の共演は、終盤の救世主となった野間口に代表される、真っ向勝負での竜虎退治となって結実した。
「クライマックスシリーズのことはまだ考えずに、きょうは優勝を奪回したわけだから、すこし酔いたいですね」
37歳で引退したときの体重86キロを、毎朝の散歩と食事管理で49歳になった今もキープ。若大将のイメージは変わらないが、指揮官としての姿は確かに成長を遂げた。今後の短期決戦で、さらなる進化を見せつける。
(牧慈)
■原辰徳(はら・たつのり)
1958(昭和33)年7月22日、福岡県生まれ、49歳。東海大相模高から東海大を経て81年ドラフト1位で巨人入団。1年目からレギュラーに定着し、新人王を獲得。83年にはMVPと打点王(103点)に輝く。95年に現役引退。巨人のヘッドコーチなどを経て、02年に巨人監督就任。1年目に日本一に導くが03年に辞任。06年から復帰した。現役通算成績は1697試合に出場、打率.279、382本塁打、1093打点。1メートル81、86キロ。右投げ右打ち。家族は夫人と1男。
★その時
原監督の父で、東海大系列校全体の野球部総監督を務める原貢氏は、一塁側ベンチ上の観客席最前列で優勝を見届けた。
「1年目は勢いで勝った。あのときは『実力で勝ったと思うなよ』と言ったけど、今年は練りに練ってやっている。頭を使っているよ」と成長した姿に目を細めた。「辰徳は先輩もたてるから、伊原コーチともうまくやれたんじゃないか。(監督)4年目になって、ゲームの進め方に深みが出て、流れをつかむことがうまくなった」。甲子園2度制覇の名将ならではの視線で、わが子の采配(さいはい)を評価した。
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