あの夏木マリが55歳で初婚成就。お相手はパーカッションの第一人者、バツイチの斎藤ノブ(56)。昨年3月、夏木がボーカルで歌うブルースバンド「ジビエ・ド・マリ」が結成されたが、彼はバンドリーダーとして仕事を共にし、この夏から交際を深めていた。
あの妖艶で怪しげなフィンガーアクションに悶々とし、夜も眠れぬ思春期を過ごした夏木ファンも多いが、最近の圧倒的支持層といえば、若い女性たちである。女性誌の投票などで“媚びない女”の上位をかざり、今や夏木マリは“カッコいい女”の代名詞となっているのだ。どうしてそれほど若い女にうけるのか。
「変化」が訪れるのは、おなじみ「絹の靴下」がヒットした頃よりずっと後。80年に裸のバックダンサーを従え日劇ミュージックホールに出演したのがきっかけで女優に“転向”し、演劇分野で文部大臣新人賞やゴールデンアロー賞などを次々受賞するまでに成長した。しかし本人は演出家の考えに左右され「集団で群れる」女優に疑問、自分が何をやりたいのか、心の迷いを吹っ切れない。「好きな演出家ならいいが、『ばかじゃん、こいつ』と思った人間に時間を費やすほど私には残された時間がないと思ってしまった」と自著「81マイナス1」(講談社)の中で振り返っている。夏木が好きなことには身銭を惜しまずいくらでも情熱を注ぐ本領が発揮されるのはここからだ。
93年、40歳を機に自ら演出、プロデュースも手がけるひとり舞台「印象派」を開始。孤独や不安と闘いながら人知れず努力を重ねた。
ニューヨークでのひとり暮らし中にイタリアの名作映画を見まくってヨーロッパに関心を持つ。それがきっかけでヨーロッパや海外に足を運び、自分の舞台がそこで評価されて自信を深める。
多彩な芸能活動を展開しつつ、いつでも戻れるベース基地として、ひとり舞台を続けている。
その後、元ピチカートファイブの小西康陽と出会い、彼の専属プロデュースで若者の支持を広げ「カッコいい」イメージが定着。今回、結婚した斎藤らとステージで共演したのをきっかけに「ジビエ・ド・マリ」を結成していた。
最近では女性誌の人生相談や講演会などでも引っ張りダコの夏木。相談者を「バカタレ」呼ばわりしたり、煮え切らない男に「死んでまえ!!」と冗談も飛ばすが、愛に満ちた親身のアドバイスが若者の心をつかんできた。
そんな夏木のモットーは「今が一番大切」。野性味あふれる音楽同様、フランス人の情熱を秘めた“愛”から目が離せない。
【2007年10月24日掲載記事】