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【国際】

宇宙で巨大太陽光発電 米国防総省が提言「10年内に実証衛星」

2007年10月27日 夕刊

米国防総省の研究グループが想定している、宇宙太陽発電システムの想像図(米国防総省提供、共同)

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 【ワシントン=共同】米国防総省の研究グループは、宇宙に巨大な太陽光発電装置を打ち上げて地球に送電するシステムを二〇五〇年までに商業化することを念頭に、他国とも協力して十年以内に小型実証衛星を打ち上げるべきだとする報告書をまとめた。

 宇宙太陽発電はこれまで米航空宇宙局(NASA)や各国で研究されてきたが、米国防総省では初めて。

 報告書は技術革新や原油価格の高騰を背景に、これまでになく実現可能性が高まっているとした上で「エネルギー資源をめぐる国際紛争を回避できる。被災地や戦場にも電力を供給でき、戦争の死命を制する」と軍事的な活用も想定している。

 研究は国防総省の宇宙国家安全保障室が主導、内外の専門家約百七十人が参加した。

 見込まれる実用システムとしては、高度約三万六千キロの静止軌道に五キロ程度の間隔で二組の反射鏡を配置。中央の太陽電池パネルに光を集め、電力をマイクロ波に変換して地上の直径五百メートル以上の受信装置に送電する。

 電気出力は最大で原発八−十基分に相当する一千万キロワット。システムの重量は国際宇宙ステーションの六倍以上の約三千トンで、建設資材の打ち上げ回数は百二十回以上となるため、低コストのロケット開発が課題という。

 商業化促進に向け政府が現実性を検証することが重要だとして、電気出力一万キロワット級の実証衛星を十年以内に打ち上げることを提言。事業費一兆円余を見積もり、国際宇宙ステーションや国際熱核融合実験炉(ITER)に匹敵する大規模プロジェクトになる。

 広報担当官のモニカ・ブランド空軍少佐は「(構想は)国防総省として正式に採用したものではないが、実現可能性を探ったものだ」としている。

  宇宙太陽発電  太陽電池パネルを地球を回る軌道に打ち上げ、発電した電力をマイクロ波などに変換して地球に送るシステム。1960年代後半に米国人科学者が構想を提案、70年代に米航空宇宙局(NASA)とエネルギー省が合同で、90年代にはNASAが単独で再度、実用化構想を発表した。

 昼夜の別なく太陽光を利用できるのが利点。日本でも宇宙航空研究開発機構などが研究を進めている。 (ワシントン・共同)

 

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