AACサウンドパフォーマンス道場 事務局
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第2回 AACサウンドパフォーマンス道場「テクノロジー時代をくぐり抜けろ!」

本公演
 ●10/6(土)15:30-19:30(愛知県芸術劇場小ホール)
   
  本番の一昨日から行われたリハーサルには緊迫感が漂い、アーティストの意気込み やその作品の包含するメッセージがひしひしと伝わってきた。入選4企画のアー ティストの作品は、2回のプレゼンテーションを通してブラッシュアップされ、一層完成度が高いものとなり、作品が持つ意味、またはそのベクトルはますます鋭角 的に突き詰められた。それぞれの方向に明確化したことを裏付けるかのように、公 開審査でも評価が分かれた。

【各アーティストの上演と公開審査】
@[b] Laptop orchestra 「Laptop Material」    
 舞台作品としての構成が改善され、PCやシステムの中に進入し破壊することが見えるような形で成立していた。パフォーマンス最後でリズムループ音楽のようなものが加工されるのが聞こえ、普段の生活の中で聞いている音楽や音響は、テクノロジーという実体の無いものに依存しているある種の「儚さ」をイメージさせる。注意深く乱暴な破壊を避けて、穏やかに壊す過程を明確に伝えようとするパフォーマンス。静かな破壊行為からは、コンピューターの破壊を通し音響を作るということ以上に、デジタルテクノロジーへの反逆のあり方、またはそれらが有する現代社会 的な問題が感じとれた。

Aシャア・R・スティーブン 「でんでん太鼓囲碁協奏曲」
   
 「囲碁のルール=音楽・音響を作る」というミスマッチから生じるリアリティ不足を、作家と観客のコミュニケーションによって解消し、観客全体がお互いのでんでん太鼓の音を聞きながら音楽を作っていくというコミュニケーションの作品。サウ ンドパフォーマンスにおいて、作家と作品の関係性が重要なものだと再認識させられた。音響としても、四方八方に広がっている観客が鳴らすでんでん太鼓の音の雲のようなものが、碁盤のシステムで渦となって動く、不思議で楽しい感覚だった。このパフォーマンスはアットホームで柔らかな楽しい時間をすごさせてくれるものであった。

B田島悠史+牟田高太郎+深澤瑠衣子 「成長する音の断片」
   
 遺伝的アルゴリズムを音楽に応用するという一貫したコンセプトの中で、生のピアノの音がしだいにPCの中で変化し、それと生の演奏が関わることで突然変異のプロセス、最適解に近づいていって、アンサンブルが成立する。ピアノの音も映像との 関係の中で意味が感じられた。作品として、アーティストの言う「最適解」に近づけたと感じられた。 同時に、とても具体的で客観的な法則をつかって音楽作品を作ることの難しさや、観客からの視点、つまりどのように伝えるのかという問題が浮かび上がる。音楽の成立過程という説明のしようがない秘密を、システムやテクノロジーの中でど のように使いこなしていくのかという課題を、あらためてサウンドパフォーマンス全体に投げかけた作品でもあった。

C安野太郎 「音楽映画・名古屋 MUSICINEMA/NAGOYA 」
    

 映像を楽譜として捉え言語化してゆき、映像に別の軸を生み出し、音楽的な発想から時間的なコンポジション、すなわち楽譜としての映像はどうありえるのかを明確に作品化した。映像と声の関係は、シーンの分割によって組み立て直され、映像に 飛びつくスピード感と、仕組まれている部分の共存に、時間的・空間的なバランスが小気味良く実現された。PCのトラブルがあったとはいえ、独創的なアイディアが持っている面白さである、人間の無意識的な知覚・欲望というところにも可能性があり、これからまだ深められる可能性を秘めている。

清野 則正
(第2回AAC道場プロジェクトレポーター、名古屋市立大学大学院芸術工学研究科博士後期課程2年)