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ここから本文エリア 大野病院事件「癒着予想できぬ」2007年10月27日 県立大野病院で04年に女性(当時29)が帝王切開の手術中に死亡した事件で、業務上過失致死と医師法(異状死体の届け出義務)違反の罪に問われた産科医加藤克彦被告(40)の第9回公判が26日、福島地裁(鈴木信行裁判長)であった。弁護側の依頼で、術前の診断や手術が妥当かどうかを鑑定した東北大学大学院の岡村州博(くにひろ)教授(周産期医療)が証人として出廷し、「カルテの超音波画像などから、術前に癒着胎盤は予想できない。診断に問題はなかった」と証言した。 胎盤はへその緒がつながっている円盤状の組織で、出産後に自然にはがれるはずの胎盤が子宮に癒着している状態が「癒着胎盤」と呼ばれる。検察側の鑑定医である新潟大学医学部の田中憲一教授(婦人科腫瘍(しゅよう)学)は7月の公判で、同じカルテの超音波画像などから「癒着を予想できる可能性はあった」と述べており、真っ向から反対する証言となった。 裁判の争点の一つは、胎盤を「クーパー」と呼ばれる手術用のハサミではがしたことの是非だが、岡村教授はクーパーの使用については「一般的に、癒着をはがすのに効果的」と説明。胎盤の癒着に気付いた時点ではがすのをやめ、子宮を摘出するべきだったとする検察側の主張には「胎盤をはがすことで子宮が収縮し、止血効果がある」とし、「癒着があっても、胎盤をむしるなどしてはがすことがある」と述べた。 診断能力については、加藤被告の書いたカルテを指しながら「慎重に診断している。超音波診断にも習熟している」と証言。術前の準備の一つである輸血用血液の量について「私も同じ量を用意する」と述べ、適切だったとの認識を示した。 検察側は、岡村教授が事件の立件前に県警の鑑定依頼を拒否したことなどから、鑑定書の中立性に疑問を投げかけた。 この日は捜査時の調書について、加藤被告に対する質問もあった。弁護側は調書が無理やり取られたとし、事実と異なる記述があることを指摘。検察側は、被告には弁護側と相談できる時間があったことなどから、自発的な証言だったとした。 マイタウン福島
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