あちこちで地域や職場の運動会が開かれたが、知人から「徒競走で転ぶ人が目立つ」という話を聞いた。最近はますます増えたのだろうか。
転倒してすり傷を負った程度ならご愛嬌(あいきょう)で終わりだろう。だが、辻秀一著「お父さんはなぜ運動会で転ぶのか?」を読むと、単なる笑い話ではすまないようだ。
転倒は一般的に肥満や足腰の衰えなどが原因といわれるが、特に足首の柔軟性が大きく関係し、現代人は足首が硬くなっているらしい。このままいくと年をとって転ぶ人が増える可能性がある。高齢者の転倒は骨折につながりやすく、寝たきりになるなどリスクは大きい。
超高齢化社会を迎える中で、転倒問題はますます重要な社会テーマになるという。著者は若いころからの生活習慣の改善が、将来の転倒予防につながると強調する。確かに日常生活の中で足首をあまり動かさなくなった。
車やエレベーターの普及で、歩かない、階段を上らない。家庭でもいすの暮らしに慣れ、正座をしなくなった。洋式トイレは足首を曲げずにすむ。テレビやエアコンの操作もリモコンで事足りる。
足首の柔軟性を保つには、意識的に動いたりストレッチをするなど、小さなチャレンジの積み重ねが有効なようだ。二十年、三十年後の自分への投資である。転ばぬ先の杖(つえ)は大切だが、若いころから足首の鍛錬も怠りなく。