三十四年前に起きた金大中事件がくすぶり出し、不快な煙を上げている 韓国は政府による組織犯罪と認め、主権侵害を謝罪するという。その一方で、日本が調査に協力しなかったとか、政治決着のせいで真相究明が妨げられたとか、文句もつけている。他人の家で悪事を働き、戸締まりが悪いと理屈を垂れる「説教強盗」みたいである 事件が起きたころ、老人の孤独死が相次ぎ、社会問題になった。あのころから近所付き合いがぎくしゃくし始め、心の優しさが薄れていった記憶がある。国同士の付き合いは、もっと厄介である。隣人を追い出したり、自分が引っ越して行くわけにはいかないのだから、誤解を解いて仲良くしていくしかない 事件を外交問題にはしない、と双方が決めた政治決着は確かにあった。が、なぜ今ごろ、それを蒸し返し、揚げ句に拉致を国家組織による犯罪と認めたのか。落ち目の現政権が当時の政権の旧悪暴露を意図した、との見方がもっぱらである それなら、それも「政治判断」。文句が言えた筋合いではない。協力して真相究明と後始末をすればいいのだが、そうは運ばないのが近所の仲なのだろうか。
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