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金大中事件:韓国調査委報告書 盧政権、謝罪回避を模索 大統領選控え争点化嫌う

 【ソウル堀山明子】韓国国家情報院の真相調査委員会が24日発表した金大中(キムデジュン)拉致事件の報告書は、当時の韓国中央情報部(KCIA)の組織的関与を初めて認め、朴正煕(パクチョンヒ)政権が隠ぺいしてきた真相を暴いた。盧武鉉(ノムヒョン)政権は軍事政権の不正追及が看板事業とはいえ、主権侵害を理由に日本に公式謝罪すれば苦境に立たされかねない。12月の大統領選を控えた政治争点化も避けるため、公式謝罪以外の実務的な早期解決を模索している。

 金大中事件の報告書は国家情報院のホームページに掲載される形で発表された。KCIAの関与確認という重大な内容にもかかわらず、調査委が委託を受けた7事件の最終的な一括報告の一部分という地味な扱い。他の6事件では記者会見を開いて真相究明の意義を強調したのとは対照的だ。

 記者会見を避けた理由について韓国政府当局筋は「公式謝罪の可能性も含めて調整するが、韓国国内で政治争点化しないよう目立たない形で進めたい」ともらした。仮に謝罪となれば過去の保守政権の外交問題とはいえ「韓国の国家的責任」を全面的に認めることになる。国内世論の反発を最小限に抑える狙いがあるようだ。

 報告書をめぐっては、政治決着で事件を隠ぺいした責任は日韓両政府にあるとして真相を明らかにすべきだと主張する調査委側と、外交問題化を懸念して公表に慎重な外交当局との間で意見が分かれ、調整に1年以上かかった。日本政府も表向きは(1)主権侵害の謝罪(2)関係者の聴取--が必要だといった原則論を繰り返してきたが、水面下では日韓政治決着で解決済みの問題を蒸し返すことに難色を示してきた。

 調査委関係筋によると、報告書発表を巡る攻防は3回あった。

 最初は、調査委が報告書をほぼ完成させた昨年夏ごろで、日韓外交当局と国家情報院が圧力をかけ、発表が見送られた。2回目は調査委の任期(2年)切れ直前の昨年10月ごろで、安倍政権発足直後の訪韓計画が進められており断念。今年3月ごろの3回目は、金大中氏本人が朴大統領の指示が不明確として不満を表明し、再検討を迫られた。

 調査委の任期延長(1年)は法的に1度しか認められず、今回のみだ。しかし、現在は与野党ともに大統領選挙への政治的影響をけん制する動きが生まれており、「発表のタイミングを逃しているうちに、報告書の重みがなくなった」(調査委関係者)と自縄自縛の状況に陥っている。

毎日新聞 2007年10月24日 東京夕刊

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