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金大中事件:韓国が報告書 KCIAの組織的犯行認める

東京で監禁、韓国に連行された金大中事件の直後、ソウル市内で現場検証に立ち会う金氏=1973年8月15日
東京で監禁、韓国に連行された金大中事件の直後、ソウル市内で現場検証に立ち会う金氏=1973年8月15日

 【ソウル堀山明子】韓国野党のリーダーだった金大中(キムデジュン)氏(後に大統領)が73年8月に東京都内のホテルから拉致された事件について韓国国家情報院の真相調査委員会は24日、当時の国家情報機関・韓国中央情報部(KCIA、現在の国家情報院)の組織的な犯行だったとする報告書を発表した。韓国政府の諮問機関がKCIAの事件関与を認めたのは初めて。日本政府は(1)主権侵害に対する公式な対応(2)捜査当局による関係者の聴取--を求める立場だが、韓国政府当局者は「調査委報告は政府見解ではない」と主権侵害認定には慎重な姿勢を示しており、外交問題化する可能性が出てきた。

 金大中氏の広報秘書官は24日、論評を発表し、報告書について「真相究明のためにそれなりに努力したと評価する」と述べる一方、「結論で優柔不断な立場を見せている」として遺憾の意を表明。また、日本政府は犯罪の証拠があるのに捜査を放棄し、韓国政府も隠ぺいしたと指摘、両国政府がともに「国民と世界に大きな過誤を犯した」と非難した。

 事件直後、拉致現場からKCIA所属とされる金東雲(キムドンウン)在日韓国大使館1等書記官(当時)の指紋が検出された。しかし、韓国政府はKCIAの関与を全面否定したため、2度にわたる日韓両政府の政治決着を経て金書記官は不起訴処分となり、韓国側捜査が打ち切られた。KCIAの関与を認めた報告書は政治決着の前提を覆すことになる。

 調査委は、事件に関与したKCIA職員ら27人を対象に、健康上の理由や死亡者を除く11人から事情聴取。金元書記官からも事件への直接関与を認める供述を得た。

 報告書は、李厚洛(イフラク)KCIA部長(当時)が「拉致工作を指示したことは疑いの余地がない」と断定。朴正煕(パクチョンヒ)大統領(同)の直接指示を裏付ける証拠はないが、「指示した可能性は排除できず、少なくとも暗黙の了解があった」との判断を示した。目的は、初めは殺害工作として推進されたが、状況変化により拉致目的に変った可能性があると指摘した。

 調査委は報告書で、韓国政府が被害者の金大中に対し、公式謝罪と名誉回復の措置が必要との見解を示した。一方、日本の主権侵害に対する謝罪には触れず、むしろ日本政府が韓国政府との政治決着を通じ「真相究明ができない結果を招いた」と遺憾を表明した。

 韓国政府高官は24日、毎日新聞に「調査委報告の次元で終わらせ、外交問題化にしたくない」と述べており、主権侵害認定と日本政府への謝罪をめぐり日韓政府間の攻防が予想される。

 調査委員会は04年11月、2年任期(後に1年延長)の官民合同の内部調査組織として発足。過去の政権の不正を追及する盧武鉉(ノムヒョン)大統領の歴史清算事業の一環で、大韓航空機爆破事件(87年)など6件の公安事件も調査した。盧政権は金大中事件に関する外交文書も06年2月から3回公開し、金元書記官の不起訴処分は日本政府側の妥協案だったことを示す日韓政府高官会談議事録など、日韓政治決着に至る交渉経緯を明らかにした。

毎日新聞 2007年10月24日 11時30分 (最終更新時間 10月24日 13時34分)

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