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【巨人はなぜ負けたかこれからどうなるか】
【野球】
2007年10月23日 掲載
チーム打率をトップに導き突然クビになった伊勢打撃コーチを直撃
「中日には力負け。巨人にはデータもIDも必要なかった」
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巨人はIDを使いこなせず |
昨22日、内田打撃コーチ(60)と伊勢打撃コーチ補佐(62)の巨人退団が正式に発表された。巨人の今季のチーム打率は12球団トップの.276。12球団最低だった昨季の.251から2分以上も押し上げたのは、この2人の手腕によるところが大きかった。が、5年ぶりに果たしたリーグ優勝の歓喜も束の間、クライマックスシリーズ(CS)3連敗が粛清を呼んだのか、突然のクビ宣告。伊勢氏を直撃した。
●胸張れる控えの打率
――12球団一の打線をつくりながら、なぜ退団することになったのですか。
「そりゃ、こっちが聞きたいわ」
――いつ決まったのですか?
「きのうの朝(21日)原監督から連絡があった。『コーチ陣の若返り』だって」
――選手の若返りなら分かりますが、コーチの若返りですか?
「そうらしい。今年、チーム打率が飛躍的にアップした。もちろん6人衆(高橋由、谷、小笠原、李スンヨプ、二岡、阿部)は大きいけど、年俸が高いあいつらが打つのは当たり前。むしろ、控え選手の打率.265という数字に胸を張りたい。毎日毎日、早出特打ちについてきてくれた矢野、カトケン(加藤)、大道……。みんなよう頑張ってくれたんやけど」
――中日とのCSで3連敗。敗因は2週間のブランクですか?
「完全に力負けです! 川上や中田のような速球は、ブランクがあったらなかなか難しい。特に中田の球はまるっきり対応できへんかったな」
●「首脳陣が慌てるのはおかしい」」
――初戦の先発が左腕・小笠原で巨人ベンチは大慌てでした。
「おかしいよな。小笠原は中日の先発陣の中に入っとる投手や。確かに読み違えたけど、焦ることはなかった。なぜなら小笠原のビデオもみんなでバッチリ見とったからや。2週間もあってノーマークなわけないやろ」
――メンバー交換の後、「めちゃくちゃだよー」と篠塚打撃コーチはスコアラー室に駆け込んだ。
「そりゃ右投手だと思っとったからやろ。紅白戦も右投手を中心に対策を練ってきた。でも、どっちにしろウチの6人衆は不動やし、7、8番を少し変えるだけなんや。ビデオも見とるわけやし、首脳陣が慌てるのはおかしい。だから選手にも連鎖してもうたんや」
――もともと、伊勢コーチは野村流ID野球のスペシャリストとして巨人に招聘(しょうへい)された。力は発揮できましたか?
「ハハハ。全然。巨人はスコアラーが主導でミーティングをする。他球団は打撃コーチが主導でやっている。だから巨人では1回も主導でミーティングをやらなかった。ただおっただけやな」
●消えた「伊勢ノート」
――原監督は「データ重視の野球をやる」と言っていましたが……。
「そう言っとったみたいやけど……。結局、最後まで監督から、データやIDのことは言われんままやった。必要なかったんかな。寂しいけどな」
――それじゃあ、選手にも……。
「主力には口を出せんかったな。こっちも気を使うしな。スンちゃん(李スンヨプ)には、ちょっと頼まれたから簡単なものをつくってやったよ」
――伊勢ノートですか?
「“伊勢ノート12カ条”や。今年は左手が痛かったのもあるけど、不調やったしな。『根拠のある球の待ち方をしなさい』ってことや。相手投手の決め球から配球を逆算してな。それを12カ条にまとめて」
――効果は……。
「なかったな(笑い)。何カ月も前に通訳に手渡したんやけど、その通訳が韓国語に訳そうと自宅へ持ち帰ってなくしたらしい。つい最近『伊勢ノートはまだですか?』って、スンちゃんが言ってきたけど、時すでに遅しやったな」
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