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【主張】集団自決検定 論点すり替えは許されぬ

2007.10.18 03:20
このニュースのトピックス主張

 沖縄戦集団自決の教科書検定をめぐり、国の姿勢が揺らぎ始めている。

 検定意見の撤回を求めた先月末の沖縄県民大会を福田康夫首相は「重く受け止めている」と述べ、渡海紀三朗文部科学相も「あらゆる党派、階層が参加した」と評価したうえで、教科書会社の訂正申請に「真摯(しんし)に対応したい」と述べた。県民大会を理由に検定意見を撤回することは許されない。

 この問題では、当初から誤解や論点のすり替えがあった。沖縄県民大会で、仲井真弘多知事は「日本軍の関与は、当時の教育を含む時代背景や手榴弾(しゅりゅうだん)が配られるなどの証言から、覆い隠すことができない事実だ」と述べた。6月の県議会でも、「集団自決は日本軍の関与なしに起こり得なかった」とする意見書が採択されている。

 だが、検定は軍の関与まで否定してはいない。また、検定は「軍命令がなかった」と断定しているわけでもない。日本軍の命令によって住民が集団自決を強いられた、とする誤った記述に対して意見を付けたのである。

 現時点では、軍命令があったという証拠は見つかっていない。そうであれば、軍命令を前提とした断定的な記述に意見が付されるのは当然である。

 沖縄戦では、集団自決を含めて12万人を超える沖縄県民が犠牲になった。沖縄戦の記述には、こうした県民感情に十分に配慮する必要があるが、そのことと史実に即した正確な記述が求められることとは、次元の違う問題である。県民感情を理由に、史実を曲げるようなことがあってはならない。

 検定後の訂正は、誤記・誤植などに限られ、検定意見にかかわる書き換えは認められていない。今回、福田内閣がこれを認めることになれば、中国や韓国などからの際限のない検定後再修正要求にも応じざるを得ず、将来に禍根を残すことになる。

 集団自決の軍命令説は地元紙の沖縄タイムスの連載『鉄の暴風』(昭和25年)で報じられ、本は朝日新聞社から出版された。その後、作家の曽野綾子さんの検証取材などで信憑(しんぴょう)性に疑問が提起されたが、不確かな軍命令説は多くの書物に孫引きされたままだ。

 新聞週間に当たり、正確な報道がいかに大切であるかということを肝に銘じたい。

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