内外情勢調査会諏訪支部(支部長=佐久秀幸長野日報社代表取締役社長)は22日、6月例会を諏訪市の「浜の湯」で開いた。はとバスの前社長で現在は特別顧問を務める宮端清次氏を講師に招き、「はとバス再建から得た教訓―私の実践的企業経営論」と題した講演を聞いた。
4年間赤字経営にあえぎ無配を続けていたはとバスを1998(平成10)年に引き継ぎ、徹底した顧客サービスと社長以下全員の賃金カットを断行。同社を建て直すと共に短期間で復配にまでこぎつけるという離れ業をやってのけた宮端氏が再建途上で、何を実行し、何を学んで、何を反省したか、具体的事例で話した。
宮端氏は社員の意識改革について、全社員が危機感と使命感を共有できるかにかかっているとし、「まずトップから変わらなければ意識改革はできない。何のために働いているのか、自分にしかできないことは何かという志を持たなければならない。リーダーは我が身を削って自分の中のろうそくに火をともし周りを照らすことが必要。『仕事には厳しく人間としては優しく』ができなければリーダーの資格はない」と指摘。
再建や改革にはスリム化、セイフティー、スペシャリティー、スピードの4Sを基本に置き、はとバス経営を引き受けたとき、顧客第一主義、現場第一主義、収益第一主義で全社員が対応しようと何回も説明会を開いた。「そんなことは頭の中では分かっているはず。具体的にどうするかということ。要するに自分が金を払ってバスに乗ること。そうすれば何がお客第一主義か分かる。客の言葉を客の1人として聞くこと。苦情や不満は宝物だ。それをトップ自らやらなきゃだめ。不満足調査を時系列でやることも必要」と話した。
また現場から教えられたサービス事例を披露した。バスガイドが車内でお客にサービスするお茶がそれまでより味が悪くなったと指摘した。聞いてみると経費節減で購入するお茶のレベルを落としたという。
宮端社長は即座においしいお茶を購入し直させた。お客が利用する現場をないがしろにすると客が逃げる。車両も座席を高く、グリーン車並みに座席を広くした。顧客サービスには可能な限り資金を投入して対応した。
サービスは「そこまでやるか」というぐらい徹底してやらないと自社の利益に跳ね返ってこないと結んだ。