大病院ほど赤字の傾向/医療経済実態調査

 厚生労働省は10月26日、医療経済実態調査の結果(速報)を中医協調査実施小委員会(会長=土田武史・早稲田大商学部教授)に報告した。調査結果によると、一般病院の1施設当たりの医業収支差はマイナス5.6%で、前回の調査結果(−2.3%)に比べて赤字幅が拡大。規模別の集計では、20〜49床が1.4%の黒字だったのに対して50床以上はすべて赤字となり、病床規模が大きくなるに従って赤字が大きくなった。特定機能病院、こども病院、7対1入院基本料を算定している病院なども赤字となり、規模が大きい病院ほど赤字になる傾向がみられた。

 「医療経済実態調査」は全国の病院や診療所などに調査票を配布し、収支状況や職員の平均給与、借入金の状況などを集計してまとめ、診療報酬改定の基礎資料にする。

 今回の調査は、病院(961施設)、一般診療所(1,155施設)、歯科診療所(711施設)、保険薬局(899施設)の回答をまとめ、2005年6月(1カ月間)のデータと今年6月(1カ月間)のデータとを比較した。精神科病院(212施設)、特定機能病院(70施設)、歯科大学病院(17施設)、こども病院(23施設)は別に集計した。

 調査を実施した全施設のうち、961の一般病院を「介護保険事業を実施していない医療機関」(516施設)と「介護保険事業を実施している医療機関」(445施設)とに分け、介護保険事業を実施していない一般病院と精神科病院を「集計1」、介護保険事業も実施していて医業・介護収入がある一般病院と精神科病院を「集計2」とした。

■ 一般病院
 
「一般病院・集計1」(414施設)によると、今年6月の1施設当たりの医業収入は約2億3,692万円で、医業費用は約2億5,008万円。医業収入から医業費用を引いた「医業収支差額」はマイナス約1,315万円で、前回調査のマイナス約6,171万円に比べて赤字が拡大している。収支全体に占める赤字部分の割合を表す「医業収支差」は、前回のマイナス2.3%からマイナス5.6%に拡大している。

 「一般病院・集計1」の医業収支差を「医療法人」「国立」「公立」「公的」などの設置主体別に見ると、「医療法人」が2.5%黒字(前回1.3%黒字)、「国立」が0.3%黒字(同0.5%黒字)を維持したが、「公立」「公的」は赤字だった。
 黒字だった「医療法人」と「国立」は人件費を前回より低く抑えたことが影響している。赤字だった「公立」は人件費がほぼ横ばいで、医業収入が前回より約4,500万円もダウンした。「公的」は人件費を抑えられたが医業収入が大きく落ち込んだ。

 「一般病院・集計1」を規模別に集計した医業収支差は、20〜49床が1.4%の黒字、50〜99床が1.5%赤字、100〜199床が2.1%赤字、200〜299床が4.4%赤字、300〜499床が5.9%赤字、500床以上が9.4%赤字となっており、病床数に比例して赤字幅が拡大している。

■ 特定機能病院など
 
「特定機能病院・集計1」の医業収支差は9.8%の赤字(前回8.7%赤字)、「DPC対象病院・集計1」の医業収支差も1.3%赤字、「こども病院・集計1」の医業収支差は45.9%という大きな赤字となっており、人件費や設備関係に費用がかさむ病院ほど赤字になる傾向がみられた。
 「精神科病院・集計1」(102施設)も同様に赤字が拡大しており、医業収支は約454万円の赤字。医業収支差はプラス3%からマイナス4.4%と大きく落ち込んでいる。

 このほか、「一般診療所・集計1」の医業収支差は19.8%の黒字だった(前回22.4%黒字)。


更新:2007/10/26   キャリアブレイン

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