ドームやきものワールド
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【社会】赤福偽装で社員が心境明かす 「従うしかなかった」2007年10月26日 朝刊 「いつかは、ばれると腹をくくっていた」−。赤福餅(もち)を再包装して製造日と消費期限を改ざんする「まき直し」など、三十四年間にわたる偽装販売が明らかになった和菓子の老舗「赤福」(三重県伊勢市)。問題発覚から二週間。現場の社員たちから聞こえてくるのは、消費者を欺く罪悪感を抱きながらも、会社の指示に従わざるを得ず、葛藤(かっとう)していた姿だった。 ある従業員は入社直後、売れ残りの赤福餅を餅とあんに分別する再利用の中止を上司に進言した。「決まりだから」との返答に、その後は押し黙った。「やっぱり生活がありますから…。罪悪感はあったけど、やらなければいけないんだと感覚がまひしていった」と明かす。 「残った商品の日付を替えて、よく売れる売店に持って行った」。営業担当の従業員は売れ残り商品をまき直す実態を証言する。「足を突っ込んだからには、行き着くところまで行くしかなかった」 弱音を吐けば「いややったら辞めてけ」。家族を養う責任ある立場。良心の呵責(かしゃく)にさいなまれ、ノイローゼになりかけた。 赤福では毎日の朝礼で唱和する言葉があるという。「お客さまに喜んでもらえる赤福餅を作ります」。美辞麗句とは裏腹に、消費者をだまし続けてきた赤福。「今もらっている給料も虚偽のように思える。“詐欺餅”を作っていたんだから心が痛んだ」。自分を責める言葉が続いた。 一方で、会社再生に向け、企業体質の見直しを模索する声もある。 「売れ残すな、商品を切らすなという利益追求ばかりの方針を改めてほしい」「親族経営が一番の問題」「全従業員が加入する労働組合はあるが、新入社員の歓迎会を開く程度。社員と会社が対等に話し合えるように変えなければ」 浜田典保社長は、あまり工場などの現場には来なかったという。約三十七年も社長を務めた浜田益嗣会長は、発覚後、公の場に一度も姿を見せていない。ある従業員は力を込めて話した。「もっと従業員を大事にする会社にしてほしい」
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