ブルセラ病の検査で陽性反応が出た乳牛の生乳が出荷されたとして保健所から乳製品を回収するよう指導された酪王乳業(福島県郡山市)が、その後感染はなかったと分かって3億円近い損害を受ける問題で、福島県が簡易検査結果を通知していなかったことが同社の損害につながったことが24日、分かった。家畜伝染病予防法は簡易検査の結果を通知するよう明確に定めていない。農林水産省は同日までに、結果を通知するよう各都道府県に要請した。
県などによると、県が1日、郡山市の酪農家が飼育する乳牛の簡易検査を行った際、1頭が陽性となった。その場合、精度の高い本検査を実施するのが規定。本検査でも陽性となり、県は10日、「ブルセラ病感染の疑い」で公表したが、16日に結果が出た再検査では感染なしと分かった。
県から9日に「疑似陽性」の連絡を受けた郡山市保健所は厚生労働省と協議し、1日以降に搾乳した生乳を使った乳製品を自主回収するよう出荷先の酪王乳業に指導。対象製品は約176万個に上り、酪王乳業は飲料メーカーに支払う補償金や回収費用など3億円近い損害を受ける見通し。
この間、酪農家は1日から9日まで生乳の出荷を続けた。県が1日の時点で簡易検査の結果を酪農家に通知し、出荷を自粛するよう指導していれば、酪王乳業の生産ラインに問題の生乳が混入することはなかった。
県衛生飼料グループは「簡易検査は精度が低く、毎年10頭前後の乳牛が陽性となるが、本検査で陰性となる例がほとんど。不確定な簡易検査ではなく、本検査で陽性となった段階で関係者に連絡すべきだと判断した」と説明している。
酪王乳業は「3億円は10年分の純利益に相当し、痛手は大きい。連絡が早ければ回収額が少なくなった。今後も乳製品メーカーが被害に遭わないよう、県や国は法の運用を見直したり、補償制度を整えたりしてほしい」と訴えている。
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