田原本町で母子3人が死亡した放火殺人事件で、奈良家裁が長男の中等少年院送致を決定したのは昨年10月26日だった。当日の夕刊で「事件に至る経緯や更生への過程を、裁判所や法務省が情報開示することに期待したい」と書いた。
1年が経過し、長男の供述調書を引用した本「僕はパパを殺すことに決めた」(草薙厚子さん著)を巡り、医師が秘密漏示容疑で逮捕され、複雑な思いだ。
草薙さんは長男のプライバシーを含む情報を出版という手段で公表した。法務省や司法側としても、もっと広い視野に立ち、少年審判で集まった情報を社会に公開・還元する姿勢、仕組みづくりを考える時期ではないだろうか。(高瀬)
毎日新聞 2007年10月26日