薬害C型肝炎大阪訴訟の口頭弁論が26日、大阪地裁(深見敏正裁判長)であり、被告の国は原告側弁護団の要求を受け、保有している感染者に関する文書をすべて提供する方針を明らかにした。個人情報のため、法廷ではなく原告側の弁護士を通じて出す。また、投与の事実を否認していた女性原告について、主張を撤回する書面も提出した。一方、原告側弁護団は厚生労働省が感染者418人分の症例リストを放置していた問題について「薬害隠ぺい体質の象徴」と非難した。
大阪訴訟の原告は計59人。大阪高裁で和解協議が進行している原告とは別に46人が大阪地裁で、ウイルスに汚染された血液製剤の投与が原因で肝炎に感染したとして、国と製薬会社に損害賠償を求めている。
この日は、女性原告の本人尋問に先立ち、原告側弁護団が意見陳述し、「感染リスクの告知や検査の呼びかけを怠っていたことが明らかになり、社会問題になっている」と指摘。そのうえで、厚労省が一転して投与の事実を認めた女性原告について「投与の事実を否認するなど事実に反する主張をして、治療の機会を失わせた」として、裁判所が慰謝料を算定する際の事情として考慮するよう求めた。
さらに、全原告について「投与や発症の事実を把握しているか明らかにし、保有する全ての文書を提出するよう求める」と述べた。
引き続き行われた本人尋問では、87年8月に次女の出産時にウイルスに汚染された血液製剤を投与された女性が証言に立った。女性は出産後間もなく肝炎を発症。入退院を繰り返したうえ、けん怠感などから家事や育児が出来ずに、次女を実家に預けざるを得なかった経験を涙ながらに話した。【川辺康広、遠藤孝康】
毎日新聞 2007年10月26日 13時02分