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大阪・寝屋川の小学校教職員殺傷:2審は懲役15年 少年に1審上回る判決--高裁 

 大阪府寝屋川市立中央小学校で05年2月、教職員3人が殺傷された事件で、殺人などの罪に問われた当時17歳の卒業生の少年(19)に対する控訴審判決が25日、大阪高裁であった。古川博裁判長は、懲役12年(求刑・無期懲役)を言い渡した1審・大阪地裁判決を破棄し、懲役15年を言い渡した。広汎性発達障害と診断された少年の処遇や量刑が争点だったが、古川裁判長は1審同様、刑事罰を選択。結果の重大性などから、1審よりさらに重い量刑とした。

 古川裁判長は、1審判決が、障害が犯行に与えた影響を認め、少年法の規定に基づき有期刑(10年以上15年以下)を選択した点について「合理性があった」と指摘。そのうえで「有期刑を選択した時点で、被告に有利な事情を考慮したとみなすことができ、上限の懲役15年を科すべきだ」と述べた。判決言い渡し後に「どうして事件を起こしたか、どう償うのかを関係者の力を借りて考えることを強く望む」と少年に語りかけた。

 裁判では、少年の障害と責任能力の関連も争点になった。古川裁判長は「犯行直前まで合理的な行動をしており、行動抑制能力が著しく減退した状態でなかった」と認定。「責任能力は個々の言動で判断すべきで、障害を有するだけで責任能力が減退しているとは言えない」と判断した。

 控訴審で弁護側は、少年法55条に基づく家裁移送の決定を求めていた。判決は、「刑務所の処遇能力に根本的な不備があるとは言えない」と判断し、少年刑務所での処罰が妥当とした。

 判決などによると、少年は同小在学中、同級生からいじめられていると感じ、担任教諭に否定的な感情を抱いた。その後、加害空想を抱くようにもなり、担任教諭らを刺そうと計画。05年2月14日午後3時ごろ、同小に包丁2本を持って侵入。鴨崎満明教諭(当時52歳)を刺殺、女性教職員2人を刺して重傷を負わせた。【遠藤孝康、川辺康広】

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 ■ことば

 ◇広汎性発達障害

 自閉症やアスペルガー症候群など自閉性障害の総称で、少年は「特定不能型」と診断された。先天的な脳機能障害とされる。他人の意図や感情を読めず、うまくコミュニケーションできない▽想像力に障害があり、情緒的理解や抽象的思考が苦手▽特定の興味や関心の対象に執着する--などの特徴がみられる。言語能力や知的発達に遅れのない人も多い。そのため、障害があることに周囲が気付かず、診断が遅れるケースが少なくない。社会への適応に困難が伴う一方、集中力や記憶力で優れた能力を発揮する人もおり、犯罪傾向とは無関係とされる。

毎日新聞 2007年10月25日 東京夕刊

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