ラジオ関西(神戸市)と兵庫県などは二十五日までに、災害時に放送用電波で特殊な信号音を流し、専用の受信端末を自動起動させ、気象庁の緊急地震速報や津波警報を音や光、文字で知らせる防災情報システムを開発した。広い範囲で受信できる中波ラジオの電波を利用した全国初の防災システムで、持ち運びできる個人向けのカード型端末も開発中。二十八日、国土交通省などが芦屋市で行う「地震津波防災総合訓練」で実証実験に取り組む。
災害時には、電話回線や携帯電話の通信が集中し、つながりにくくなる現象が起こる。一方で同社は阪神・淡路大震災の際、社屋が全壊しながらも、がれきの中から生放送で被災者の安否情報や生活情報を伝え続けた。同社はこうした経験を踏まえ、県やコンピューター周辺機器製造「ヤノ電器」(神戸市)などと、災害時に強い中波ラジオの電波を生かした防災情報システムの開発を進めてきた。
新システムは、気象庁から同社に緊急地震速報や津波警報が入ると、瞬時に放送で特殊な信号音を流し、電波が届く範囲にある端末を自動的に起動させる仕組み。「安全安心・ラジオQQシステム」と名付けられた。
二十八日の実験では、芦屋市南芦屋浜などの訓練会場に、箱型で据え置きタイプの端末を設置。午前九時すぎ、放送で起動させた端末から「津波が来ます」との自動音声が流れ、赤色灯も点灯、津波警報を知らせる。端末は航行中の船舶の停止や水門の閉鎖などと連動させられるほか、個人が携帯できるようカード型に小型化したものも開発中。衛星利用測位システム(GPS)を組み込めば、特定エリアだけでの起動も可能になる。
同社は「行政や企業に活用を呼び掛けるほか、カード型端末は数百円程度で来年春以降に販売したい」と話している。
(石崎勝伸)