海底人8823(はやぶさ)

   CATVの“ファミリー劇場”で、『海底人8823(はやぶさ)』の未見だった第1回を
観ました。
 いやァ、ぶっ飛んでいますね。こんなシュールな作品観たことがない。(笑)
 8823が、ただ突っ立ているだけのタイトルシーン。忘れようたって、忘れられま
せん。(笑)
 海底人というのは、2億年前に、地球に大接近したツイフォン彗星のため海底
に沈んだエル大陸の生き残りなんです。初回では、まだ説明はありませんでした
が……

 8823の初登場シーンが最高に可笑しいんですよ。
 湖におりる斜面の脇道で、うつ伏せに倒れている8823を勇少年が見つけるん
です。ちょっと離れたところにベルトが落ちていて、8823が苦しい息の下からベ
ルトをとってくれるように勇少年に頼むんですね。
 勇少年がベルトを8823に渡すと、

「これで助かったよ。これがないと危ないところだった」
「この寒いのに湖水で泳いでいたんですか?」
「いや、陸で調べることがあってね。斜面を歩いていて、滑ってしまった」
「この辺は赤土が多いですからね。誰でも滑るんですよ」
 なんという会話だ。勇少年は8823をウエットスーツを着けたスイマーと勘違いしたらしい。
 それにしても赤土で滑って、生命維持装置のベルトが外れて死にかけたヒーローとは……(笑)

 8823が謝礼として勇少年に与えたのが3万サイクルの笛。吹いても音がしない。
「何か用事があったら、この笛を吹くんだよ。僕には聞こえるから」
「あの、名前は?」
「これは失敬。僕の名前はエルデ10008823」
「それ、電話番号ですか」
「これは僕の名前だよ」
「まるで歴史の年号を覚えるみたいだ」
「面倒だったら、おしまいの8823でもいい」
「これって数字でなくて、字のように読むんですね。ハヤブサじゃないですか」
「名前なんて符号にすぎないので、好きなように呼んでいいよ」
 もう、腹を抱えて笑ってしまいましたよ。8793だったら、ハナクソになっていたかも。(笑)
 それにしても、海底人が湖(芦ノ湖)から現われるとはね。芦ノ湖と海とは、湖底のどこかで継っているのか
なァ……

 それで、これからどうなるか、といいますと、
 勇少年が世話になっている(勇少年の父親は海で遭難して行方不明)及川博士の研究を巡って、悪の秘密
結社BS団と、8823との戦いになるんですな。多分。
 及川博士の研究というのが、原爆や水爆など比較にならない世界に平和をもたらす科学の革命、Xー132
の数式というのですから、凄いものなんですよ。それがどんなものかというと、とにかく凄いんですよ。(笑)

 こりゃあ、次回も見逃せない。

 
 でもって、第7回まで観ました
 勇少年が、8823からもらった笛を最初に役立てたのは、勇少年が乗っていたスクーター(富士重工のラビ
ットマイナー号)が動かなくなった時なんです。
 笛を吹いたら8823がやって来てスクーターの修理。“正義の勇者”の最初の仕事がスクーターの修理とは
ね。(笑)
 さすがに8823も、こんな用事で呼び出されたらかなわないと思ったのか、
「笛を1回吹いたら機械、2回吹いたら僕が来ることにしよう」
と、勇少年と取り決めるんですね。
 その後、勇少年が散歩していたら、背広姿の8823がやって来たので、
「こんにちわ、ハヤブサさん」
「ぼくは、8823の9です」と言って通り過ぎて行く。
 すると、また背広姿の8823がやって来たので、
「こんにちわ、ハヤブサさん」
「ぼくは、8823の6です」と言って通り過ぎて行く。
 すると、また背広姿の8823がやって来たので、
「こんにちわ、ハヤブサさん」
「ぼくは、8823の3です」と言って通り過ぎて行く。
 すると、また背広姿の8823がやって来たので、
「あなたは、8823の何番ですか?」
「アハハハ、僕は本物の8823だよ。今までのは僕の機械。今日は用事があるので、これで失敬」
と言って、去って行くんです。
 何のことはない、わざわざ機械を紹介するだけのシーンでした。(笑)

 及川博士がイギリスで世話になったブラック博士が日本にやって来るのですが、これがブラック博士に変装
したブラックスター(BS)団の首領。及川博士に近づいて、数式Xー132を奪おうと考えているんですね。
 しかし、8823がそれを見破り、本当のブラック博士をBS団のアジトから救出します。偽のブラック博士は、
捕まえにきた8823の機械を秘密光線で破壊して何処かへ逃げ去ります。
 8823は自分が海底人であることを、及川博士とブラック博士に告げ、数式132を敵の手から守るために
及川研究所を訪ねます。そして、タイピストの女性が敵のスパイであることを見破り……

 タイトルで8823が、ただ突っ立っているだけかと思っていたのですが、特殊拳銃を射っているんですね。
 これがカタカタと音が出るだけの、駄菓子屋で売っているオモチャのような拳銃なんですよ。(笑)

 こりゃあ、まだまだ見逃せない。

 
でもって、
 タイピストはブラックスター団一味の変装で、ブラックスター団の隠れ家に捕えられている本者のタイピストを
8823が救出します。
 この隠れ家というのが、ブラック博士が監禁されていた家(小屋というかアバラ屋)と同じなんです。悪党たち
は、裏をかいたつもりなんですかねェ。
 次ぎにブラックスター団は、及川博士を東京に誘い出し、そのスキに博士の娘のみどりを誘拐します。知ら
せを受けた博士は、数式X132を勇少年のハム友達に預け、8823と箱根に戻ります。
 勇少年が羽田で笛を吹くと、芦ノ湖にいるはずの8823が東京湾から現われます。8823が平泳ぎでやって
来たのには思わず笑ってしまった。
 そして一瞬のうちに箱根へテレポート。ブラックスター団の首領の別荘で遊び疲れて寝ていたみどりを救出
します。首領というのが、ブラック博士と何故か同じ役者。ブラック博士になりすます為に整形手術でもしたの
でしょうか???
 みどりが別荘から持ちかえったライターを見て、博士はそれがロンドンで一緒に研究活動をしていた牧口五
郎の物だと気がつきます。それで、ノコノコひとりで別荘を訪ねるんですよ。
 ナイジェリアの奥地でマスターしたジュジュの秘法により、博士は牧口に催眠術をかけられ、数式X132の
隠し場所を自白します。研究所へ戻った博士は奇妙な行動をとりますが、テラスから落ちたショックで正気に
戻ります。ここまでくると、ご都合主義というよりシュールな世界ですね。
 勇少年のハム友達に預けていた数式X132は、ブラックスターの手下に奪われます。しかし、万一に備えて
数式は二つに分けられており、半分は及川博士のもとにあったんですよ。
 奪われた数式を取り戻すべく8823は、ブラックスター団のアジトへ向かいますが、牧口が仕掛けたニトログ
リン爆弾によって倒されます。スーパーマンの弱点がクリプトンナイトという物質にあったように、8823の弱点
はニトログリンなるガスらしいのですが、なぜ弱点なのか全然説明がな〜い。
 牧口は8823を捕まえていると及川博士に連絡し、8823との交換を条件に、数式の半分を博士に要求し
ます。そして数式を一人占めにするために、仲間を皆殺しにし、8823に変装して博士を待ちうけます。
 そうとは知らぬ及川博士は、牧口が変装した8823を見て、数式を牧口の愛人に渡しますが、そこへ勇少
年と、死んだと思われた8823が現われます。
 牧口は愛人と自動車で逃げるんですが、その車には時限爆弾が仕掛けられているんですよ。仲間を殺されたブラックスター団の女性隊員が復讐のために仕掛けていたんですね。
 8823の指示により8823ノ1が牧口の車を待ちうけて飛び乗り、後部座席に置いてあった数式を取りかえすことに成功します。そして自動車は爆発し、悪は滅びるのです。

 とにかく、オイオイと言いたくなるシーンの連続で、見ていて愉かったですよ。エド・ウッドに似たカルトな魅力に溢れていて、熱烈なファンがいるのも解かりますね。
 それにしても私が名前を知っている役者は、『図々しい奴』で人気が出る前の大部屋時代の丸井太郎(研究所のガードマンのバンさん)と、新東宝から流れてきた感じの荒川さつき(牧口の愛人役)という女優だけで、後の役者さんは、後にも先にも全然知らな〜い。
 みんな、大部屋のままで終わったのですかねェ。だけど、勇少年の演技なんて、子役なのに笠智衆なみの演技をしていましたよ。(笑)

荒川さつき

 最後に、第二部の予告編が、映画的で実に愉しいんだなあ。
「次回は国際都市・港横浜に移る。我等の友の正義の味方8823は、どのような活躍をするであろう……」
というナレーションの後に、撮影カメラのアップにカチンコ。そして“撮影快調”と、くるんですよ。
“極限電子発動機を狙う 怪盗団と集団スパイ網”
“工場爆発と死因不明の殺人”
“そして守衛長の危機”
“工場襲撃の怪盗団は誰か?”
“その危機を救うべく 我等の友ハヤブサ”
“対決する黒い影”
“海底人8823 撮影快調”
“御期待下さい”
これぞ予告編!!

 

第二部

 タイトルが、水中から8823が飛び出してくるシーンが加わり少しカッコよくなりました。拳銃もカタカタ鳴るのでなく、バーンと銃声がして“海底人8823”とタイトル表示されます。
 だけど内容は……

 8823の登場シーンにはブッ飛びましたねェ。勇少年が持っていた3万サイクルの笛は、バンさん(丸井太郎)が預かっているのですが、及川博士の友人・日高博士の家で8ミリ映画の映写会があって、バンさんが持っていた笛を日高博士の娘が誤って吹いてしまうんですね。すると、8823はスクリーンの中に現れるんですよ。
「あっ、ハヤブサさんだ。こんにちわ」
「バンさん、ぼくに何か用かい?」
「いやあ、間違って笛を吹いてしまったんですよ」
「そうか、事件でなくてよかった。それじゃあ、ぼくは帰るからね」
「噂に聞いていたけど、不思議な人だ」
 なんだ、これは! 8823の出番を作るだけのシーンなのか。(笑)

 その頃、工場が次々に爆破され、アンモニアが盗まれるという事件が発生します。日高博士が工場長をしている工場にもアンモニアがあって、8823が守衛に変装して強盗団を待ちうけます。
 強盗団は怪しい女に雇われており、彼女の背後には謎の黒い影がいます。この黒い影の正体はX星人で、アンモニアがないと地球では生存できないんです。それと、宇宙船の燃料が不足していて、X星まで帰ることができないんです。
 守衛長が強盗団に誘拐され、整形手術で変装したニセ守衛長の手引きによってアンモニアは奪われますが、8823は鷹取山に着陸しているX星人の円盤宇宙船をつきとめます。しかし、円盤から噴出するアンモニアガスで、8823といえども円盤に近づくことはできません。
 現在は、鷹取山公園付近は住宅が密集していますが、当時は石仏の周りは何にもなかったんですね。とはいっても、誰かが気づきそうなものだが……
 日高博士が発明した極限電子発動機のことを嗅ぎ付けた国際スパイ団が、その設計図を奪いに工場へ現れます。強盗団もそれに気づき、さらにX星人も気づき、設計図争奪戦が繰り広げられます。
 日高博士はX星人に誘拐されますが、円盤を見て、その科学力に驚き、自分をX星に連れていってくれるように頼みます。X星人も了承するんですね。
 結局、極限電子発動機の設計図はX星人が手に入れるのですが、8823はX星まで飛べる圧縮燃料との交換で設計図を取り戻します。そして、日高博士に地球に残るように説得しますが、日高博士の意志は固く、X星へ飛び立つんですよ。
 宇宙船を見送る8823、日高博士の家族、及川博士、バンさん。
 「科学を戦争でなく、平和のために使うようになれば、僕たち地球人も、すぐに宇宙旅行ができるようになるよ」だってさ。
 でもって、エンド。

 う〜ん……、シュールな世界だ。

 

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