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英会話学校NOVAが会社更生法を申請 猿橋社長は降格

2007年10月26日

 英会話学校大手のNOVA(大阪市、ジャスダック上場)は26日午前、大阪地裁に会社更生法の適用を申請し、保全命令を受けた。負債総額は439億円。経済産業省による行政処分の影響などで受講生の減少が続き資金繰りが悪化、自主再建を断念した。猿橋望社長は代表権を解かれ、取締役に降格された。800前後ある全教室の運営は一時停止され、今後は約30万人とみられる受講生への受講料返還が課題となる。

 ジャスダック取引所は26日、NOVA株を11月27日付で上場廃止にすると発表した。

 負債のうち、約200億円は受講生が前もって支払った受講料。管財人が確保したNOVAの資産は、講師や従業員の未払い賃金(労働債権)などに優先的に回されるため、受講料が返還されるかどうかは不透明だ。

 NOVA経営陣は、危機的な経営が続くなか、役員7人のうち4人が辞任届を提出するなど混乱。25日深夜に取締役会を開いて猿橋社長を解職し、吉里仁見、アンダース・ルンドクビスト、渡辺勝一の取締役3人が代表権を握った。猿橋氏の解職理由について「不透明な資金調達方法や業務提携の条件交渉で、十分な説明が得られなかった」としている。

 NOVAは、教室の賃貸料不払いや、外国人講師への給料支払い遅延で「自主休校」が拡大していた。猿橋氏の方針に危機感を抱いた一部経営陣が、民事再生法よりも裁判所の関与が強い会社更生法下での再建を目指したとみられる。

 今後は会社更生法適用下で経産省や金融機関などと連携しながらスポンサーを募り、事業継続の道を探る。だが、全国に展開するNOVAの教室数や受講生の数は膨大で、地域分割などの検討も必要とみられる。

 「駅前留学」の広告などで知られるNOVAは、教室数の急拡大やテレビ電話システムによる講座などを進めたが、採算性が低下して07年3月期決算は2期連続の当期赤字を計上した。

 さらに、解約時の受講料返還を巡るトラブルも相次いだ。6月には経産省が不実告知などの特定商取引法違反で1年を超える長期契約を半年間停止する命令を出した。受講生減少に拍車がかかり、07年4〜6月期の連結決算は、売上高が前年同期比31.9%減の92億円、営業損益が45億円、当期損益24億円のいずれも赤字だった。

 受講料の返還や人件費、教室の賃貸料に充てるため、赤字教室の閉鎖や不動産売却で現金を確保してきたが、資金繰りは改善しなかった。自主再建を目指した猿橋氏は支援企業探しに奔走。旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)の沢田秀雄会長や英字紙など複数の候補と接触したが、具体的な支援は得られなかった。

 《NOVA》 売上高の業界シェア47%(同社調べ、05年度)で、英会話学校最大手。大阪出身の猿橋望氏が、欧州留学から帰国して81年に「ノヴァ企画」を設立、英会話事業に乗り出した。大阪・心斎橋に1号教室を開き、86年には東京に進出。93年からは「駅前留学」をキャッチフレーズにしたテレビCMで知名度を高めた。07年3月末時点の教室数は925、受講生数は約41万8千人だったが、教室閉鎖や解約でいずれも減少している。07年3月期連結決算は営業損失25億円、当期損失24億円。

 《会社更生法》 経営破綻(はたん)したが、再建の見込みがある株式会社を立て直す手続きを定めた法律。会社や債権者、株主が裁判所に申し立てる。更生手続きの開始決定までは、裁判所が選んだ保全管理人が財産を保全する。その後、更生管財人が会社の資産を調べ、債権放棄などを盛り込んだ更生計画案をまとめる。計画案は関係人集会で債権総額の2分の1以上を持つ債権者の同意などで可決、裁判所が認可する。

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